なぜソフトバンクは短期決戦でも無敵なのか 元コーチが解き明かす「地力」の中身
柳田、グラシアル、中村晃のトリオに続く“お祭り男”にも存在感
「パーソル クライマックスシリーズ パ」を2試合連続逆転勝ちで制したソフトバンク。21日開幕の日本シリーズでも、4年連続日本一へ向けて視界良好だ。かつてホークスでヘッドコーチ、監督代行を含め13年間指導者を歴任し、その後オリックス監督も務めた森脇浩司氏が、その「地力」の源泉を解明する。
CS第1戦では2回に先発・千賀が安田に先制2ランを浴び、第2戦でも1回に東浜がいきなり3点を奪われたが、いずれもじわじわと追い上げ逆転勝ちを収めた。王貞治球団会長は「地力(じりき)の差」と表現した。「地力」とは、辞書的に言えば「本来の力、実力」という意味。二枚腰、三枚腰のしぶとさ、勝負強さとも言えるだろう。
森脇氏は「ホークスの地力には様々な要素があるが、打線の中軸に柳田、グラシアル、中村晃という非常にレベルの高い本物の打者が3人も揃っていることがその1つ」と指摘する。
「よく“短期決戦では、何が起こるか分からない”と言われますが、それは力を持っている選手がまるっきり機能しないまま終わってしまうケースがあるからです。しかし、ソフトバンクの場合は、主軸の3人が総崩れというケースはさすがに起こりにくい」と説明。「柳田とグラシアルには、ケースによってスタイルを変えられる心身の柔軟性があり、晃も、分が悪いと見るや(進塁打など)戦術を絡めることが出来る強みがある。打線は水物と言われるけれど、最低限の得点は計算できるのです。ホークスが短期決戦でも安定した力を発揮できる理由の1つです」と語った。
CS第1戦でも、柳田は2点ビハインドの4回に、バックスクリーン左の中堅席へ特大のソロアーチを放って追撃ムードを盛り上げ、グラシアルは持ち前の広角打法と選球眼を発揮し、3打数2安打1四球と気を吐いた。第2戦では中村晃が、3点を追う2回に2ラン、4回には逆転2ランを連発し、CSのMVPに輝いた。「CS2戦を通じて2度にとどまった1番・周東の出塁が増えれば、無形、有形の力が働き、打線の威力はさらに厚みを増すでしょう」とも森脇氏は付け加えた。
しかも、ソフトバンク打線で怖いのは、主軸の3人だけではない。「松田宣はCS第2戦で中村晃の逆転弾に続いて左翼席へソロを放ったように、大舞台に強い“お祭り男”。レギュラーシーズンでは調子が上がらなかったデスパイネも、CS2戦を通じて8打数4安打。もともと強引にさえならなければ、主軸の3人に匹敵する好打者です」と森脇氏。
日本シリーズで2年連続の対戦となる原巨人にとっては、大変な脅威。多彩なタレントをそろえたソフトバンクの牙城を崩すのは、やはり容易ではない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)