なぜ鷹・周東佑京は速いのか? 元巨人・鈴木尚広氏が分析する6つのポイント

巨人で活躍した鈴木尚広氏【写真:荒川祐史】
巨人で活躍した鈴木尚広氏【写真:荒川祐史】

地面を蹴るという感覚が「もしかしたら持っていないかもしれない」

(4)足裏全体で地面を踏んでいる
「後ろ(一塁コーチャーの視点)から見ていないので、正確かは分かりませんが、おそらく、足は地面と垂直につけることを心がけているのではないかと思います。なので走る姿もキレイ。よく『地面を蹴る』と言いますが、周東選手の場合は『蹴る』という表現よりも『踏む』という方が適切かもしれませんし、蹴るという感覚を持っていないのではないでしょうか。地面に着いただけで床の反力が大きい。後ろに蹴るイメージだと力は逃げてしまうので、接地の仕方も考えられた走り方だと思います」

(5)頭がずっと上がらないからスライディングまで速い
「これも本当に難しいことです。走っていると頭はだんだんと上がってきてしまう。スライディングの時もそのまま、入っていけているからスピードが落ちません。『スライディングをするぞ』と意気込むと人は一瞬、動きが止まる。スピードが落ちる。なので周東選手の場合は『スライディングする!』みたいな感覚も持っていないかもしれません。頭の位置が上下左右に動いて、盗塁シーンが静止画のように見える人は、速くはない人。速い人は“スーーッ”と行くような見え方を映像ではします」

(6)ストライドが大きく、回転率が高い
「歩幅が大きくなると体の使い方が難しくなるので、普通は足の回転率は悪くなるのですが、周東選手はそんなことはない。100メートルの世界記録保持者のウサイン・ボルト選手を見ても分かるように速さは、ストライド(歩幅)とピッチ(回転)によって決まります。周東選手はしっかりと膝が前に出て、勝手に足が上がっていくイメージ。体も目線もブレていない」

 他にも細かく分析すると、周東の速さのポイントはあるという。鈴木氏は引退しても後進育成のために、体の使い方、走り方などの走塁分析を続けている。

「いいスタート、速いスピード、良いスライディングをいかにできるか。ひとつひとつの精度が高ければ、セーフになるし、それが自信に繋がっていく。それができていれば、たとえアウトになっても、ぶれることはない。大事なことは再現性です。確信の持てる裏付けがあれば、アウトでも落ち込む必要がない。周東選手はロッテ戦で柿沼捕手に刺されたシーンがありましたが、あの走塁は見事だったと思います。柿沼くんの送球が素晴らしかったのと、遊撃の藤岡くんのタッチも真下にグラブを落とすうまさもありましたから、ロッテ側を褒めるべきと思います」

 鈴木氏は「あくまで仮説です」と繰り返していた。現役生活20年で自分なりに考えてきた走塁哲学と照らし合わせた中で「なぜ速いのか」「だから速いと思う」と周東が長けているポイントを分析した。これから盗塁を極めたい人には周東の真似をするのではなく、“なぜ”を紐解いて、自分なりの回答を出し、練習方法を導き出して欲しいと願っていた。

【動画】アウトになっても「キレイなフォーム」 走塁のスペシャリストが絶賛した鷹・周東の走塁映像

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