セのDH制、試験的に導入を 選手の負担軽減とパフォーマンス向上へ議論すべき

パのDHは1人の先任者のものではなく、複数の主力打者が交代で守備の負担を軽減…

 プロの世界で投手が打席に立つのは、体力的な負担が大きく、リスクも高い。死球や走塁中のケガの危険はもちろん、内角球に詰まらされ、手がしびれて次の回の投球に影響を及ぼすケースもある。そういうリスクを回避するため、よほどのチャンス以外では、ストライクを3球見送って帰ってくるような投手が多いわけだ。DH制でなくても、投手たちは“自衛手段”を取っているのだが、ファンから見て気持ちのいいものではない。

 高校野球であれば、「エースで4番」の選手も多く、教育の一環として「投げても打っても全力プレー」を求めてもいいのかもしれないが、体が資本で生活がかかっているプロの投手全員にそれを求めるのは酷だろう。

 もちろん、中には元巨人の桑田真澄氏のように、常にバットを短く持ち打つ気満々で打席に入った投手もいるし、とんでもない打力の持ち主も現れる。巨人V9時代のエース、堀内恒夫氏は投げてはノーヒットノーラン、打っては3打席連続本塁打の離れ業を演じた。江夏豊氏は阪神時代、延長11回表まで相手にヒットを1本も許さず、その裏に自らサヨナラ本塁打を放ってノーヒットノーランを達成したことがある。

「DH制を導入すれば、そういうドラマが生まれなくなる」という意見もある。しかし、DH制の下でも指名打者を使うことは義務ではない。日本ハムが現エンゼルスの大谷翔平投手の在籍時、パ・リーグ公式戦で大谷の登板日にDHを使わず、打席にも立たせたケースがあったように、場合によっては投手に打たせる余地もある。

 また、DH制は昔から「打撃だけは超一流、守りは三流──というタイプの選手にもチャンスが広がる」と言われてきた。個人的にはそんな“偏った天才”を見てみたいが、最近はパ・リーグでもDHは、1人の先任者のものではなく、複数の主力打者が交代で守備の負担を軽減するためのポジションになっているのが現実だ。

 ソフトバンクは今季、チーム最多の42試合で先発DHを務めたバレンティンが、左翼でも12試合に先発。デスパイネは19試合、柳田は17試合、グラシアルは17試合DHを務める傍ら、守備にも就いた。日本ハムのスタメンも、中田がDH55試合&一塁62試合、近藤がDH33試合&左翼70試合、西川がDH15試合&中堅100試合と分担されていた。

 昭和のプロ野球を知るOBからは「何でもかんでも負担軽減とか言って、選手を甘やかすな!」と怒りの声も聞こえる。それにも一理あるのだろうが、適度の休息を取ってパフォーマンスの質を上げる考え方が浸透しつつあるのは確かだ。1度、セ・リーグという“畑”にDH制という種をまいて、どんな実がなるのか見てみたいと思う。

 話し始めれば、ファンからもDH制導入に賛否両論が上がるはずだ。しかし少なくとも、「野球は9人対9人。嫌なものは嫌」とばかりに、議論も尽くさずに旧態依然としたシステムを続けていくことを歓迎する野球好きはいないだろう。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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