ロッテの快進撃を可能にした“5イニング” 数字で見る先発投手の貢献度は?
先発陣のイニング消化能力が、救援陣の負担を減らす好循環が
以上のように、ほぼ全ての先発投手が一定以上のイニング消化能力を示していたことがわかる。石川投手、美馬投手、チェン投手といったベテランのみならず、小島投手や岩下投手のような若手にも「悪くとも5回まで」という起用法が見え、各投手もその期待に応える粘りを見せていた。こういったイニング消化という面での貢献度は、必ずしも防御率や奪三振数だけでは測れないところではあるだろう。
先発投手が平均90球以上を投じて、できる限り長いイニングを消化。残されたイニングは役割をしっかりと分担したリリーフ陣が受け持ち、特定の投手に過度の負担がかからないように徹底した管理のもと、慎重な運用がなされていた。得点よりも失点のほうが多くとも、シーズンを通して勝ち越しを作れた理由の一つには、こういった投手運用のもと、勝てる試合をきっちりと白星に結び付ける体制が確立されていたことがあるのではなかろうか。
前編でも示した通り、今季のロッテは打線が全体的に低調だったこともあって、先制されたまま追いつけずに敗れるというケースは多かった。普通であれば苦しいといえるこの状況を、「リリーフ投手の過度な連投を避けられる」という一種のアドバンテージに変えてしまったことも、先を見越した投手運用と、我慢強いベンチワークのなせる業と言えるのではないだろうか。
井口資仁監督は球団ワーストとなる87敗を喫して最下位に終わった2017年オフ、指揮官の座を受け継いだ。そして、初年度が5位、2年目が4位、そして今季は2位と、シーズンを経るごとに着実に順位を向上させている。投手コーチとして日本ハムとソフトバンクで日本一を経験した吉井理人投手コーチの、目先に囚われない思い切った投手運用も奏功し、今季はピタゴラス勝率の予測を覆すような快進撃を披露してみせた。
王者ホークスをはじめ、強敵がひしめくパ・リーグを勝ち抜くのは容易ではない。だが、今季の起用に基づいた投手陣の安定が来季も持続したうえで、安田尚憲内野手、藤原恭大外野手をはじめとする若手が成長して打線の得点力も向上すれば、来季は頂点を狙うことも決して不可能ではないはず。就任4年目を迎える井口監督が率いるロッテの戦いぶりと、名伯楽・吉井コーチが手がける独特の投手運用に、来季も注目する価値は大いにあるはずだ。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)