豪州で語学留学&ワーホリ 侍ジャパン女子代表・中島監督が伝えたいチャレンジの勧め

侍ジャパン女子代表・中島梨紗監督【写真提供:NPBエンタープライズ】
侍ジャパン女子代表・中島梨紗監督【写真提供:NPBエンタープライズ】

自分の意見を英語で表現できず…『喋るのやめた! もうイエスしか言わない!』

 大好きな野球をプレーしながら海外生活を楽しんでいるように思えるが、もちろん苦労もした。「言葉の壁」だ。

「言葉の壁を越えるまでが大変でしたね。しばらく経つと耳が英語に慣れてきて、人が言っていることは分かるようになる。でも、それに対して自分の言葉を返せない時期があって『喋るのやめた! もうイエスしか言わない!』と思ったこともありました。でも、これを越えて、自分の思ったことをドンドン発信できるようになると『あ、すごく気持ちいいな』と思えたんです。聞き取ったり理解したりするというのは割とできると思いますが、思ったことを言ったり集団の会話に入ったりするのが難しい。会話についていけたと実感できた時は、本当にうれしかったですね」

 英語で自分を表現できるようになると、野球でも一皮むけたという。

「野球でも自分の意見を言えるようになると『この子もちゃんと考えているんだ』って見てもらえるようになり、踏み込んだコミュニケーションを取れるようになりました。オーストラリアでは自分の意見を言わないと、置いていかれるだけ。人見知りだったり大人しかったり、性格はあると思いますが、チームに入って野球をするとなった時はそれではダメ。自分を出すべき時は出すことで、選手として一歩も二歩も上にいけると思います。『気持ちに気付いて』と待つのではなく、声を出して伝える大切さに気付きました。日本に帰ってきても、必要な時にパッと言えるようになったと思います」

 英語でコミュニケーションが取れるようになると、オーストラリア球界でネットワークが広がった。そこから生まれた縁を通じて、現役引退後は日本の冬場にオーストラリアでコーチング修行。2018年の第8回W杯でオーストラリア代表の投手コーチも経験した。すべては一歩踏み出す勇気から始まったわけだが、「つまづくこともありましたが、今はやっぱり行ってよかった、とすごく思っています」と笑顔を浮かべる。

 時折、現役選手から海外経験について聞かれることがあるという。海外でプレーすることに興味を持つ選手に返すのは、決まって「絶対に行った方がいいよ」の言葉だ。

「行くこと自体がすごくいい経験になると思うと伝えています。やはりいろいろな経験をして成長していくと思うので、失敗と言われようが、成功と言われようが、自分がためになったと思えばプラスですから」

 結果はどうであれ、チャレンジすることが自分の成長を促し、世界を広げる。自分が体験したからこそ送りたい、中島監督による「チャレンジの勧め」だ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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