「パッと閃いたことを口にしていいのか…」中日・与田監督の“リスペクト指導術”

中日・与田剛監督【写真:荒川祐史】
中日・与田剛監督【写真:荒川祐史】

アドバイスを送るタイミングに気を配る「数日じーっと見て」

 中日の1軍キャンプは第3クール最終日の14日、DeNAとの練習試合が雨天中止となった。登板予定だった投手たちがブルペンで投げ込む中、与田剛監督は6年目ドラフト1位の小笠原慎之介投手らにアドバイスする場面も。「ここ数日じーっと見て感じていたことを伝えました」という言葉には、選手を第一に考えた指導法が滲む。

 この日先発予定だった小笠原は、ブルペンで直球のみ63球。投げ終えると、与田監督と言葉を交わす場面が見られた。「プレートの踏み方だったり、股関節の柔らかさだったりを、いろんな選手を例に挙げてもらいながら言っていただきました」と指揮官からの助言の一端を明かす。

 アドバイスの内容もさることながら、与田監督が気を配るのは伝えるタイミング。「自分がパッと閃いたことを、本当に口出していいのかどうかというのを、もう一度検証しないと。選手たちはオフからの取り組みを悩みながらも自分なりにやってきている。だから迷わせてもいけない」と意図を語る。

“あーでもない、こーでもない”とブツブツつぶやきながら試行錯誤を続ける選手たち。その過程が、思いつきで台無しになるのを避けたい。加えて、その日だけだったということもある。だからこそ2、3日観察し、自らの中で咀嚼して選手に伝える。「本人の理解と感覚が似てこないと、なかなか難しいとも思う」と選手の思いを尊重する。

 ただ、即座に修正が必要だと判断すれば「パッと言うこともあるんですよ」とも。重要なのは、指導の押し引き。ただ自らの経験やノウハウを押し付けるだけでは指導ではない。あくまで引き出しのひとつを提供し、生かすかどうかは選手に委ねる。

 昨季は8年ぶりにチームをAクラスに導き、真価が問われる就任3年目。選手たちの姿に目を光らせ、悲願の優勝に向けた戦力の底上げを図っていく。

(小西亮 / Ryo Konishi)

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