14年360億円タティスJr.「40歳までは…」異例の長期契約ににじむ父親の野球愛

父タティスは03年に現役引退も06年に復帰、08年にカムバック賞

 1999年4月23日、ドジャースタジアムで行われたカージナルス戦で1イニング2本の満塁ホームランに遭遇した。韓国人初のメジャーリーガー、朴賛浩から左翼へ2発を見舞ったのがタティスJr.の父、フェルナンド・タティスだった。試合後、ビジターの狭いクラブハウスで報道陣に囲まれた小柄なタティスは、「僕はマグワイアじゃないからね。まさか2本を同じ回に打てるとは思わなかった」と言って、笑いを誘った。三振が多かったイメージがあるが、時のトニー・ラルーサ監督は「好球をしっかり待てるいいバッター」と評していた。

 あの年、タティスは自己最多の34本塁打を放つ活躍を見せたが、怪我などもありその後は低迷。2001年に移籍したエクスポズで3シーズンを過ごし現役引退を表明した。しかし、3年後の06年にオリオールズと1年契約を結びメジャー復帰を果たすと、1年のブランクを経て08年にはメッツでメジャーに返り咲いた。この年、92試合に出場し打率.297、11本塁打を記録し、タティスは、MLB選手会が選ぶ「カムバック賞」を手にしている。

 丸みを帯びた体で奮闘していたあの頃、タティスから聞いた一言が鮮やかに蘇った。

「野球はいいなぁ」

 情熱はお金で買えない。父タティスが持ち続けた野球愛は、確かに、ジュニアに受け継がれた。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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