野球界は「実は極端に狭い世界」 引退して実感…五十嵐亮太氏が他分野から得る刺激
解説者として試行錯誤「言葉の選び方は難しいなと思います」
日米合わせて23年間、プロ野球選手としてマウンドに上がり続けた五十嵐亮太氏は、今年からユニホームを脱ぎ、新たな生活をスタートさせた。スキーやバイク免許取得など現役時代にできなかったことにチャレンジする日々。いろいろな刺激を受けながら、この先自分に何ができるか、新たな可能性を模索している。
2020年10月25日に現役を引退すると、1か月も経たないうちに野球解説者としてデビューを果たした。以来、テレビ・ラジオ各局に幅広く出演。選手の気持ちや考えを深く洞察する解説が好評だが、解説者・五十嵐の目に映る野球は現役時代のものとは「大分違いますね」という。
「選手時代はチームのために自分がどうすべきかを考えている。もちろんチームのことも考えて、チームが目指す方向へ進もうとやってきたけど、一番は自分だから見えない部分はたくさんあります。でも、今は立場が変わって、一歩離れた場所から全体が見えるので、選手の時は気付けなかったことに気付けることがありますね。今さらですけど『あの時は監督やコーチに迷惑を掛けたな』って気付くこともある(笑)。現役を離れて、余裕が生まれてきたから見えるんでしょうね」
解説の対象となるのは、つい昨年までチームメート、対戦相手として共に戦ってきた仲間たちだ。だからこそ、解説する時には大切にしていることがある。
「やっぱり選手の気持ちを忘れてはいけない、というのはありますね。選手に対してのリスペクトは忘れずに。試合を見ていれば、注意すべきポイントが明らかなことがある。その時に『そこがダメ』と指摘するのではなく、見た目には失敗だけど次に繋がるポイントはないか、どうにかプラスに変えられる要素はないか、考えますね。そういうことも含めて、言葉の選び方は難しいなと思います。同じことを言うにしても、言葉の選び方で伝わり方が変わってしまう。この言葉を聞いて不快に思う人はいないか、その辺は気を付けています。語彙力って、ホント大事ですよね」
ただでさえ、その場に即した的確な言葉を選ぶのは難しい。ましてや解説と言えば、現在進行形の試合をライブ放送で伝える仕事。現役時代とは違った瞬発力や判断力が必要となる。だからこそ、新たなリスペクトの気持ちも沸いてきた。
「実況するアナウンサーの方は、めちゃくちゃ凄いと思います。特にラジオの実況アナは『これぞプロだな』って思いますよね。映像がない分、試合状況を説明しながら解説者に話を振って、そのコメントに返事をしながら、合間に試合状況を挟む。時には球場内にいるリポーターから話も飛び込んでくるし、いろいろなバランスを取りながら、でも試合には集中している。今まで野球の実況を聞いても特に思うことはなかったけれど、一緒に仕事をすると『凄いな』って尊敬する気持ちが強まりました」