「ゴミを拾って運を拾う」 大谷翔平を球宴二刀流1勝へ導いた恩師の教えと感謝の思い

オールスター戦に二刀流出場し球宴初登板初勝利を飾ったエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】
オールスター戦に二刀流出場し球宴初登板初勝利を飾ったエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

花巻東時代に作成した目標設定シートの「ゴミ拾い」は佐々木監督の教え

■ア・リーグ 5ー2 ナ・リーグ(日本時間14日・デンバー)

 エンゼルスの大谷翔平投手が13日(日本時間14日)、ロッキーズの本拠地で行われたオールスター戦で史上初の二刀流出場し、球宴初登板初勝利を飾った。先発投手として1回を3者凡退に抑え、勝ち投手となった。日本人投手では1995年野茂英雄(ドジャース)以来2人目の先発登板で挙げた歴史的な勝ち星。その裏には花巻東時代から守る恩師からの教えがあった。

◇ ◇ ◇

 試合後の囲み取材。大谷はいつになく充実した表情を浮かべた。91回目の開催で初の球宴二刀流。「楽しかったです。多少疲れましたけど、雰囲気自体は楽しめたかなと思います」。球宴の主役は声を弾ませた。

 メジャー4年目で初のオールスター。投手・大谷が輝きを放った。最速100.2マイル(約161.3キロ)。160キロ超の剛速球を連発させ、タティスJr.、マンシー、アレナドを3人斬りした。「普段は初回から三振ばかり狙うことはないんですけど、きょうは全部取りに行くつもりでいった。結果取れなかったですけど、いいところに投げてもしっかりコンタクトする率も高い。さすがだなと思うバッターが多い」。自分はまだまだ――。“ライバル”を見つけて、むしろ嬉しそうだった。

 恩師の教えを夢舞台でも実践した。試合前。ブルペンからベンチへ戻る途中、外野の芝生付近に落ちていた“ゴミ”を拾い、尻のポケットにしまった。花巻東高時代。佐々木洋監督から学んだことの1つが、このゴミ拾いの大切さだった。

「ゴミは人が落とした運。ゴミを拾うことで運を拾うんだ。そして自分自身にツキを呼ぶ。そういう発想をしなさい」

 高校時代は毎日30分から1時間かけてミーティング。そこでは野球ではなく、“人間力”を徹底的に叩き込まれるという。大谷は高校時代に作成した目標達成シートの「運」の項目に「ゴミ拾い」を挙げ、その習慣はメジャー公式戦でも続けてきた。試合中、地元放送局のインタビュー中に勝ち投手の可能性を伝えられ、「あ、僕がですか?」と驚いていたものの、試合前のゴミ拾いが勝ち星の運を引きつけたのかもしれない。

 もちろん感謝の気持ちも忘れない。このオールスター期間中、マリナーズ・菊池雄星が用意した母校のユニホームに「花巻から世界へ」と、先輩左腕と共に直筆サインを書き込んだ。さらにオールスター記念ボールにも直筆サインを入れ、後日、母校へ贈るという。高校時代の目標達成シートに記した「人間性」の項目には「感謝」とある。忠実に守り、大舞台での躍動につなげた。

 日本人初のホームランダービーに「あまり得意な感じではない」というレッドカーペットショー。そして、史上初の球宴二刀流で勝ち星と歴史的な2日間を完走した。「いろいろ勉強になりましたね。ゲームだけじゃなくて、準備の仕方だったりどんな練習やってるのかなとか。すごい勉強になったかなと思います」。超一流選手たちから新たな刺激をもらい、MVPレースのかかった勝負の後半戦に挑む。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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