「経験しないと選手は育たないって!」苦境でも西武・辻監督が貫いた育成術
辻発彦監督のやり繰りで山田、呉念庭、愛斗、岸ら新戦力が台頭
これほど主力に故障が相次ぐシーズンも珍しい。西武は33勝38敗14分け、首位オリックスに6.5ゲーム差の5位で前半戦を終えた。就任後過去4年でリーグ優勝を2度果たし、Aクラスを逃したことは1度もない辻発彦監督にとっては屈辱的な成績だろう。
開幕直後から山川穂高内野手、栗山巧外野手らが戦列を離れ、死球を受けて左腓骨を骨折した外崎修汰内野手の不在は3か月に及んだ。さらに源田壮亮内野手が5月下旬に新型コロナウイルスに感染。中堅のレギュラーの座を射止め、盗塁王争いで独走態勢を築いていたドラフト4位ルーキー・若林楽人外野手まで、守備中に左膝十字靭帯損傷の大怪我を負い今季中の復帰が絶望的になった。
「やり繰りが大変過ぎて、固定した打線が組めなかった」と述懐した辻監督だが、もちろん嘆いていただけではない。外崎の代役として、7年目・24歳の山田遥楓内野手を二塁手に抜擢。4月上旬から約1か月間、先発起用した。山田は常に守備位置で大声を張り上げる元気と、軽快なフットワークで躍動した。
印象的だったのは5月3日のオリックス戦。1点ビハインドの7回の攻撃で2死満塁とすると、相手は左腕の宮城から右サイドスローの比嘉にスイッチした。ここで打席に入ったのが、右打者で打率.226の山田。ベンチには左打者の川越、鈴木も控え、代打も考えられる場面だったが、辻監督は山田をそのまま打席に送った。結果は、カウント3-2まで粘ったものの、遊ゴロに倒れて同点機を逸し試合にも敗れた。
「ああいう場面を経験しないと、選手は育たないって! 山田だってレギュラーとしてやっているんだから。(批判は)全て結果論だから!」。試合後、この選手起用について問われた辻監督は語気を強めた。
きっかけは主力選手の穴埋めだったとしても、一定期間スタメンで使うと決めたからにはレギュラーとして扱って自覚を求める。そんな辻監督の姿勢が表れた瞬間だった。
こうしたやり繰りの中から、呉念庭内野手は監督推薦で球宴に初選出されるほど成長し、愛斗外野手、岸潤一郎外野手も台頭した。戦列を離れていた主力もほぼ戻り、従来の戦力と新戦力が効果的に融合すれば、後半戦の巻き返しは十分期待できる。辻監督の前半戦の苦労が劇的に報われるだろうか。
(Full-Count編集部)