金メダル王手の侍ジャパン 専門家が感嘆した稲葉監督の継投策と3度目の“初球打ち”
野球評論家の飯田哲也氏は伊藤の2イニング救援に「正直驚きました」
■日本 5ー2 韓国(4日・準決勝・横浜)
悲願の金メダルへ王手をかけた。東京五輪の野球日本代表「侍ジャパン」は4日、横浜スタジアムで行われた準決勝・韓国戦に5-2で勝利し、決勝進出を決めた。2-2の同点で迎えた8回2死満塁で山田哲人内野手(ヤクルト)が左翼フェンス直撃の3点二塁打を放ち、勝負を決めた。かつてヤクルトなどで名外野手として鳴らした野球評論家の飯田哲也氏は最大の勝因として、7回からの2イニングをルーキーの伊藤大海投手(日本ハム)に託した稲葉篤紀監督の継投策と、その期待に応えた伊藤の好投を挙げた。
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2点のリードを6回に追いつかれ、やや劣勢だった侍ジャパン。同点のままで迎えた7回に稲葉監督が3番手としてマウンドへ送ったのは、ルーキーの伊藤投手でした。しかも、伊藤投手が7回を無安打1四球2奪三振無失点で乗り切ると、続く8回も続投させました。この回跨ぎの決断には驚かされました。
8回に平良海馬投手(西武)、9回に栗林良吏投手(広島)を投入するのが必勝パターンです。しかし、状況は同点で、タイブレークでの延長戦も視野に入れなければなりませんでした。無死一、二塁から始まるタイブレークでは、三振を取れる栗林が絶対的な力を発揮します。実際に2日の米国戦でも、栗林はタイブレークを無失点で抑えて勝利に貢献していました。この日も勝ち越すまでは栗林をとっておきたかったでしょう。それにしても、8回は千賀滉大投手(ソフトバンク)や山崎康晃投手(DeNA)に交代させる選択肢もあったと思います。
伊藤に2イニング目を任せた稲葉監督の決断は、ある意味で難しい決断だったと思います。伊藤は2死からキム・ヒョンスに左翼線二塁打を打たれましたが、続く左の代打の切り札チェ・ジュファンを二ゴロに打ち取りました。非常に落ち着いていて、ストレートでもスライダーでもストライクが取れたのが良かったと思います。稲葉監督の期待に応え、韓国に傾きつつあった流れをピタリと止めたことで、その裏の山田の決勝打に繋がりました。
もちろん、同点の8回2死満塁で初球のストレートを1発で仕留めた山田の打撃も素晴らしかった。侍ジャパンの打者たちは今大会で、試合前半には早いカウントで打って出ず、じっくりボールを見る傾向が見られます。ところが、開幕戦のドミニカ共和国戦で坂本勇人内野手(巨人)がサヨナラ打を放ったのも初球。準々決勝の米国戦で甲斐拓也捕手(ソフトバンク)が放ったサヨナラ打も初球を打ったものでした。ここぞの場面では集中力が高まる。さすがは日本を代表する選手たちです。
今大会の4試合はいずれも劣勢となる場面がありましたが、このメンバーは追い込まれるほど底力を発揮する。非常に頼もしいと思います。ぜひこの流れのまま、金メダルを獲得してほしいです。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)