かつて「スーパー1年生」と呼ばれた左腕の成長 智弁学園・西村が迎えた“集大成”

先発した智弁学園・西村王雅【写真:共同通信社】
先発した智弁学園・西村王雅【写真:共同通信社】

90キロ台のカーブも連発、緩急生かした投球で倉敷商を抑えた

 第103回全国高野球選手権は11日、阪神甲子園球場で第2日を行い、第1試合では智弁学園(奈良)が10-3で倉敷商(岡山)を下し2回戦へ進んだ。先発の左腕・西村王雅投手(3年)が8回無失点の好投で勝利を引き寄せた。西村は前川右京外野手(3年)とともに2年前の夏の甲子園にも出場し、当時「スーパー1年生」と呼ばれた逸材。コロナ禍で頂点を目指せなかった1年を超え、最後の夏に懸ける。

 淡々とマウンドに立ち、アウトを積み重ねていった。西村は1回、2回と走者は許したものの併殺や盗塁死もあり3人ずつで片付けた。8回を限りに降板するまで、連打を許したのは1度きり。被安打6本、無四球という“らしい”好投にも「三振を取り切れなかったり、無駄な球も多かったので」と反省をまず口にした。

 前日、西村に「完封しろ」と伝えていたという小坂将商監督は「西村がリズムよく投げてくれて、攻撃にも集中できたんじゃないですか」。強打で鳴らす学校らしく、14安打で10得点を奪った打線への波及効果を喜んだ。

 2019年夏の甲子園、背番号11で登板機会も得た「スーパー1年生」。昨夏の交流大会、今春の選抜では1番を着けてチームを背負った。この試合、投げるのはその選抜以来というカーブがキーになった。90キロ台のボールでうまく緩急をつけ、倉敷商を手玉に取った。

 この間はフォームの修正とともに、カーブを上手く投げられなくなっていた時期もあるという。「甲子園に戻ってきて、大事だなと思いました」という“必殺球”で活路を開く。この投球術こそ、西村本来の姿だ。小坂監督も西村の成長を「相手をしっかり見て、タイミングをずらす能力には天性のものがある。それが1年生の時から徐々に出てきている」と口にし、集大成の投球を求める。

 もう一人の「スーパー1年生」はもがいている。1年夏の甲子園で4番を打った前川右京外野手(3年)は「3番・左翼」で先発。奈良大会の1番から打順が動き、キーマンに指名された格好だ。4打数2安打とはいえ、いずれも内野安打。高校通算35本塁打の大砲には物足りない結果に終わった。小坂監督も「県大会はよかったけど、きょうはバッティングが受け身になっていましたね。もうちょっと自分のスイングをできれば打てる」とハッパをかけた。

 今春の選抜で8強入りしている智弁学園は、今大会の優勝候補の一角にも挙げられている。2人はどんなプレーで、成長を示してくれるだろうか。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY