いよいよ聖地でベールを脱ぐ157km右腕 スカウトの予測を超えて急成長した明桜・風間
中日・八木スカウト「ワクワクした気持ちで見ることができる」
故郷・山梨でも遊び相手は兄だった。5歳上の長兄・球道さん、3歳上の次兄・球星さん(駿河台大)とキャッチボールやバッティングをしてきた。時にはサッカーも。幼少期の年の差は大きい。球打と名付けられた三男は、兄たちのようにプレーができず、悔しさを味わってきた。同時に「兄貴たちみたいにこなしたい」という向上心も常に持ち続けてきたという。その体験が先輩に好投手がそろっていた高校でも生きたのではないか。なお、5歳下の弟の名前は球志良君。全員、名前の頭文字に「球」が入る男4人兄弟だ。
育った環境と先輩投手陣の存在、そして学年もあり、「弟感」が強かった風間だが、3年生になった今年は「少年」から「青年」へと大人の階段を登った印象を受ける。シーズンを前に「自分は試合になると力が入ってしまう。体重移動でも前に突っ込んでしまう。その点を意識して、安定して投げられるようにしたい。今年は力まないように投げたいと思っています」と話していたが、今年は投球フォームでも打者との対峙でも、力の入れどころ、抜きどころといった調整が上手くなった。昨年までは出力100パーセントで力みがみられた。そんなありったけの力を出そうとする「全力」から、力加減をコントロールしてベストな状態で力を発揮する「全力」へと「全力」の質も変わった。
2年生までは「来年のドラフト候補」という位置付けだったが、3年生になると「ドラフト1位候補」へと評価を上げた。「リリースの強さがずば抜けている。一流と言われる投手が持ち合わせている資質。教えてできることじゃない」とはソフトバンク・作山和英スカウト。昨年までの投球フォームは上体の強さが目立ち、体が一塁側へ流れることがあったが、高校で2度目の冬を越えて下半身の強さもついてきた。作山スカウトが続ける。
「体幹も含め、筋肉のバランスが整ってきたんだと思う。効率のいい投げ方に変わってきた。去年はポテンシャルの高い素材型の選手というイメージだったが、完成度も上がってきている。(高知の)森木君が高校生ではずば抜けた、精度の高いピッチングができるタイプ。それに対して、素材型の風間君というイメージだったが、ピッチングの内容が上がっていて成長度合いが高い。バッティングもいいからトータルで評価していこうと思っていたけど、ピッチャーとしての内容がよくなっている。すごい、伸びたよね。いつかはこういうところまで来る選手だと思っていたけど、期待値を上回って伸びてきたなという感じ」
昨夏の独自大会で150キロをマークした試合を見ていたのが中日・八木智哉スカウト。「どこまで伸びるか、楽しみ。(選手を見ていて)こうなるだろうとイメージするけど、風間君は上限が分からない」と表現していた。それから1年が経ったこの夏、八木スカウトは「ワクワクした気持ちで見ることができる。風間君の試合を見ていると時間の経過が早いんですよね」と言った。年間、何百試合も視察するスカウトをも楽しませるとは恐れ入る。