「夢、憧れを我慢した彼らを尊敬」 智弁和歌山が“歓喜の輪”作らず即整列したワケ

21年ぶり3度目の優勝を果たした智弁和歌山ナイン【写真:共同通信社】
21年ぶり3度目の優勝を果たした智弁和歌山ナイン【写真:共同通信社】

優勝した瞬間にマウンドに集まらず整列、宮坂主将「礼で始まって礼で終わる」

 第103回全国高校野球選手権は智弁和歌山(和歌山)が9-2で智弁学園(奈良)に勝利し21年ぶり3度目の優勝を果たし幕を閉じた。和歌山大会に続き優勝を決めた際に行う“恒例の儀式”は見られなかった。試合後、中谷仁監督は「夢、憧れを我慢した彼らを尊敬できる」と感慨深げに語っていた。

 3回途中からマウンドに上がったエースの中西聖輝(3年)が最後の打者を空振り三振に仕留めると、ナインは淡々と整列に向かった。春、夏とも全国制覇を決めた直後にマウンドに集まり歓喜の輪を作るのが恒例だったが、2021年の夏にその姿はなかった。

 主将の宮坂厚希(3年)は優勝インタビューで「礼で始まって礼で終わるということで。礼が終わってから全員で喜ぼうという話の中で」と説明。コロナ禍で開催された今大会。県予選、そして甲子園期間中に辞退するチームもある中で、智弁和歌山は様々な思いを胸に頂点に立った。

 マウンドに集まらないことは中谷監督が求めた訳ではない。自身も高校時代の1997年に夏の甲子園で優勝し“歓喜の輪”を知っているだけに「優勝して集まるのは憧れ、夢だったので」。選手たちの思いは痛いほど分かっているだけに「時代の流れ、世の中がこういう状況なので。子どもたちと話してみて、1回考えてみて?」と判断を託した。

 宮坂主将を含めメンバーが出した答えは県大会と同じだった。その光景を間近で見届けた指揮官は「子どもたちが出した答えがマウンドに集まらず……。夢、憧れを我慢した彼らを尊敬できる」と称えていた。

 全試合2桁安打と“強打の智弁”を復活させ、大きな成長を見せた智弁和歌山ナイン。プレー以外の面でも全国制覇に相応しい姿を見せた。「3年生に関しては、どうしたらいいだろうと自信が持てない選手が多かった。大きな大きな自信にしてこれから先の人生を歩んでいってほしい」。21年ぶりの“歓喜”を手にした中谷監督は誇らしげだった。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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