稲葉監督が明かした金メダルの要因 「8年間かけて築いた」選手たちとの“関係値”

「良い選手を選ぶのではなく、良いチームを作りたい」という言葉の意味

 稲葉監督は「侍ジャパンは春と秋の2回しか集まれないので、なかなか選手と腹を割って話すということは難しいが、私には4年という月日があり、もっと言えば小久保ジャパンのコーチをさせていただき、8年間で築き上げたものが大きかった」としみじみ振り返り、「そういう準備をしてきたからこそ、最高の結果につながったのだと思います」と言い切った。

 4年間で最も印象に残った場面を聞かれ、真っ先に挙げたのは、2018年11月13日、MLBオールスターチーム相手の日米野球第4戦(マツダスタジアム)の1シーンだった。同点で迎えた9回1死一、三塁。菊池涼介内野手(広島)は稲葉監督に「セーフティーバントをしましょうか?」と提案し、実際に決めて決勝点をもぎ取った。さらに東京五輪でも、準々決勝で甲斐拓也捕手(ソフトバンク)が指揮官に「初球から打っていいですか?」と確認した上で、初球を叩いてサヨナラ打。決勝でも坂本勇人内野手(巨人)が「ここはバントですか?」と話しかけ、つなぎ役を果たした。どれもこれも、各選手が稲葉監督の方針と自分の役割を理解していたからこそ、できた芸当である。

 果たして、侍ジャパンの次期監督は、これほど選手とコミュニケーションを取り、チームとして成熟させることができるか。そもそも、その機会と時間を与えられるのだろうか。稲葉監督は「次の監督がどうなるかはわかりませんが、その監督の考えというものがあるので、私からアドバイスすることは何もありません」と語ったが、その成功の理由を改めて分析する価値はありそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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