松坂大輔に食らったノーノーで変わった人生 京都成章の正捕手が伝えた感謝の言葉

引退試合のマウンドに上がった松坂大輔【写真:荒川祐史】
引退試合のマウンドに上がった松坂大輔【写真:荒川祐史】

吉見太一さん「気分が良くなるから音を鳴らして捕ってくれと…」

 今季で23年間の現役生活に幕を下ろした西武・松坂大輔投手。1998年の夏の甲子園決勝戦では、横浜高のエースとしてノーヒットノーランの偉業を成し遂げたが、この時の対戦相手である京都成章高で正捕手を務めていた吉見太一さんは、10月19日にメットライフドームで行われた引退試合をスタンドから見守った。そして試合後には、長い間言うことができなかった感謝の気持ちを伝えた。

 吉見さんは高校卒業後、立命館大に進学。「プロに入って松坂の球を捕りたい」という思いを強く持ち、同じ舞台を目指し練習に励んだ。そして、社会人のサンワード貿易を経て2005年大学・社会人ドラフト3巡目で西武に入団。松坂が入団した7年後にチームメートになり、その夢を叶えた。

「キャンプで球を受けたのですが、正直ブルペンではそんなにすごいとは思わなかったです。でもその後、紅白戦で捕ったときにボールが変わった。球が速く、変化球がよく曲がる。マウンドに立つと変わるんです。大輔には『気分が乗るから音を鳴らして捕ってくれ』と言われました。そのためにミットの芯でボールを捕る練習をしました」

 プロ1年目の2006年は1軍での出場機会がなく、この年のオフに松坂は米大リーグのレッドソックスへ移籍。公式戦で球を受けることができないまま、吉見さんは2010年に現役を引退した。

 それから10年後の2020年、松坂は14年ぶりに西武に復帰。復帰後初登板は引退試合となった。全盛期のような球速は出なかったが、マウンドでの立ち振る舞いや、他を寄せ付けない雰囲気は当時のままだった。その姿に、吉見さんは込み上げる涙を抑えることができなかった。最後の登板を見届け、帰路に就こうと駅へ向かったが、心の中にモヤモヤした気持ちがあった。これまでずっと、松坂に感謝の気持ちを伝えられずにいた。「このまま帰ったら悔いが残る」。そう思い、球場に引き返した。

「大輔には、『ありがとう』という気持ちしかありません。高校生の時に彼と対戦して『プロ野球選手になって、大輔の球を捕りたい』という気持ちが芽生え、目標が明確になった。彼が1年目からプロの世界で頑張ってくれたおかげで『プロ野球選手になりたい』という気持ちがさらに強くなった。自分がプロの舞台に立てたのは大輔のおかげです。『感謝の気持ちを伝えるのは今日しかない』と思いました」

松坂大輔は「自分たちに目標をくれた存在でした」

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