中日元投手コーチが感じた大野雄大の成長 五輪ブルペン待機の経験で若手も“進化”
指導者として新たな挑戦にも意欲的「トライしてみるチャンスかな」
今年は現場を離れ、解説者として野球と接することになるが、ピッチングを極めたいという探究心は持ち続けたまま。「ソフトボールで投げるチェンジアップやライズボールを上手で投げられないものか、と。野球は技術的にかなり限界まで来ているような気がしているので、あの極端にオフスピードになるボールや浮き上がるボール、あそこにヒントがあるような気がするんですよね」と話す様子は、どことなく楽しそうだ。
先日は縁あって、この春から高校に進む中学3年生たちとキャッチボールをする機会があったという。阿波野氏は小学6年生や中学3年生がチームを引退してから、4月に新チームに加わるまでの期間をどのように過ごすかが、その後に大きな影響を与えると考えている。
「この時期は大事ですよ。ここで差がつくと思います。一緒にキャッチボールをした中学3年生に伝えましたが、高校に入学して1年目は体力作りに励もうなんて言っている間に、翌年にはスーパー中学生が入ってきて立場が追われることもある。だから、高校1年生から試合に出ることを目指して、今から練習をしておくのはいいことだよ、と。試合に出られなかったら、楽しくないですから」
侍ジャパンでは2013年からトップチームを筆頭にU-12代表まで全世代を体系化し、若い世代から国際大会を経験させるなど育成面にも力を入れている。コロナ禍以前は各地で野球教室などを開催していたが、阿波野氏はアカデミーのような形式でじっくりと育てるシステムがあっても面白いのではないかという。
「仲間意識も生まれるでしょうし、幼い頃から侍ジャパンとして自信をつけておけば、大人になって日の丸を背負って戦う時の重圧が少し軽くなるでしょうね。日の丸の重みはつける人が勝手に感じているものかもしれませんが(笑)。幼い頃に練習することも大事だけど、試合で得られる成功体験が成長を後押ししてくれる。そういう環境を整えて上げられるといいですよね」
これまでは主にプロ、あるいは社会人を指導してきた阿波野氏だが、今後はアンダー世代の子どもたちの指導にも挑戦してみたいという。
「これまでの自分のキャリアの中にないものは、トライしてみるチャンスかなと思います」
確固たるキャリアを積み上げてもなお、野球人としてさらに幅を深みを増していこうと意欲的な阿波野氏。次はどんなチャレンジに乗り出すのか楽しみだ。
(佐藤直子 / Naoko Sato)