打者大転倒させ失点回避「上手くいった」 西武ドラ1、咄嗟の“神業”に辻監督も驚嘆

ヤクルト戦に先発した西武・隅田知一郎【写真:宮脇広久】
ヤクルト戦に先発した西武・隅田知一郎【写真:宮脇広久】

同い年のライバル燕村上を打ち取り「力負けしなかった」

■西武 6ー5 ヤクルト(オープン戦・19日・ベルーナドーム)

 西武のドラフト1位ルーキー隅田知一郎(すみだ・ちひろ)投手が19日、本拠地ベルーナドームで行われたヤクルトとのオープン戦に先発し、4回4安打1失点(自責点0)と好投した。4回に迎えたピンチでは、咄嗟にスクイズを外す“離れ業”も披露。辻発彦監督も「センスがあるやつはできるのだろうけれど……凄いね」と感嘆するしかなかった。

 隅田がこの日楽しみにしていたのは、同い年で同じ九州出身である燕の主砲との対戦。ヤクルトの村上が熊本・九州学院高出身なら、隅田は長崎・波佐見高から西日本工大を経てプロ入り。高校時代には対戦したこともある。初回2死二塁の“プロ初対戦”では「力んでしまった」。ストライクが1球も入らず、四球を与えたが、3回2死一、二塁では真ん中高めの146キロ速球で中飛に。「同世代で活躍しているのが村上と平良(西武)なので、力負けしなかったのは良かった」とうなずいた。

 驚くべきは4回。1死満塁のピンチで、打席の投手・高橋に対する4球目を捕手・森が後逸(記録は捕逸)して失点。なおも1死二、三塁、カウント2-2からの5球目に、相手が3バントスクイズを敢行してきた。隅田は咄嗟にスライダーを外角低めのボールゾーンへ投じ、高橋は空振り。大きく飛び出していた三塁走者のオスナもタッチアウトに。三振ゲッツーに仕留め、最少失点で切り抜けた。

「スクイズが考えられる場面だったので、クイックモーションを少しゆっくりめにして投げました。ストライクゾーンへ投げるつもりでしたが、バッターがびくっと動いたので、少し抜くような感じで(咄嗟に外した)。うまくいきました」としてやったりだった。

 左腕の“スクイズ外し”で思い出すのは、1979年に広島と近鉄が戦った日本シリーズ第7戦。広島・江夏豊投手が1点リードで迎えた9回裏、1死満塁の大ピンチで、同点を狙った相手のスクイズを咄嗟に見破り、カーブの握りのまま外角高めに外して空振りさせ、日本一を引き寄せたことは球史に残る名場面だ。名投手・江夏だからこそと言われた神業を、新人がやってのけられるものなのだろうか。

 この日、速球は最速149キロを計測。カーブ、スライダー、カットボール、スプリット、チェンジアップと変化球も多彩だ。3四球は与えたが、決して制球難で崩れるタイプではない。すでに開幕ローテ入りのお墨付きを得ている左腕は、1週間後の開幕第2戦の26日・オリックス戦(ベルーナドーム)に先発しプロデビューを飾ることが濃厚。オープン戦“最終登板”で、新人王の最有力候補であることを再認識させる投球だった。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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