勝者と敗者を共に称える大拍手 京都国際の辞退で生まれた近江と長崎日大の“特別な思い”

試合後、アルプス席へ一礼する近江ナイン【写真:共同通信社】
試合後、アルプス席へ一礼する近江ナイン【写真:共同通信社】

京都国際の出場辞退で急遽参加となった近江が延長13回の死闘を制する

 敗者も勝者も特別な思いを胸に試合に挑んでいた。第94回選抜高校野球大会の大会2日目第2試合は、出場辞退の京都国際に替わり、参加した近江が延長13回の死闘の末、6-2で長崎日大を下した。急遽出場となった近江、対戦相手が変更となった長崎日大の監督、選手たちが試合後に口にしたのは感謝の言葉だった。

 近江は「4番・投手」で出場したエース・山田陽翔投手(3年)が165球の完投、そして打っても延長13回に決勝打を放った。対する長崎日大も6回に2点を奪い、先取点を挙げると、右腕・種村隼投手(3年)、左腕・川副良太投手(3年)の両腕が力投を見せ最後まで接戦を演じた。

 勝者となった近江の多賀章仁監督は、出場が決まった18日に京都国際の小牧憲継監督から電話を受けていたことを明かし、試合前に選手にその思いを伝えていた。準備期間が少ない中でも最後まで諦めず、粘りの野球で逆転勝ち。「昨年の夏は(交流試合となった)前年の3年生の気持ちを力にしてベスト4。今年は京都国際さんの無念を背負って、思いきりやろう」。負けられない思いはどのチームよりも強かった。

 本来なら京都国際と対戦する予定だった長崎日大。序盤はリードしながらも、惜しくも敗れた平山清一郎監督は「近江さんがこの試合に準備してくれて、試合をさせてもらったことがありがたかった」と感謝すると、主将の河村恵太内野手(3年)も「強い相手に変わりはないので動揺はなかった。山田君は今まで対戦した投手の中でもいい投手。甲子園という大きな舞台で対戦できて良かった」と振り返っていた。

 コロナ禍で涙を飲んだ京都国際の思いを胸に、両チームは甲子園という舞台で持っている力を十分に発揮。試合終了のサイレンが鳴り響くなか、観客からは大きな拍手が注がれていた。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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