「気持ちも球も浮いてしまった」離島から8年ぶり甲子園、大島を襲った“風”の洗礼
明秀日立に完敗…プロ注目の左腕・大野「もう1度戻ってくる」
第94回選抜高校野球大会は23日、阪神甲子園球場で大会5日目の3試合を行った。第2試合では、大島(鹿児島)が明秀日立(茨城)に0-8の完敗を喫した。鹿児島県本土から約380キロという離島のハンデを跳ね返し、21世紀枠で出場した2014年以来2度目の選抜出場を果たしたが、ナインは夏へ向けて課題を突き付けられた。
「“不慣れ”のひとことに尽きます。もう1回甲子園に来られたら、次は結果が出るチャンスもあるのではないか」。塗木哲哉監督は残念そうに振り返った。
2回の守備で2死満塁から、プロも注目する先発の左腕・大野稼頭央投手(3年)が本坊匠外野手(3年)に押し出し四球を与え、先制を許した。続く平野太智内野手(2年)は左前へポトリと落ちるテキサス性の2点二塁打。3回にも1点、4回にも4点を奪われ、相手に傾いた流れを止めることができなかった。
打ち取ったと思った飛球が、甲子園特有の風にあおられ、再三野手の間に落ちた。昨年の春・夏に続き、今大会も新型コロナウイルスの感染拡大のため、開幕前の甲子園練習が実施されなかった。「やはり知識だけで甲子園球場の特性をつかむことは難しい。体感できていなかった。普段は捕れていたフライでした」と塗木監督。「舞台が大きくなるほど、自分自身との勝負。そして対応力が問われる。そこを意識して練習していきたい」と夏へ目を向けた。
8年前は21世紀枠での出場だったが、今回は昨秋、鹿児島県大会優勝、九州大会準優勝の実績を挙げて甲子園に乗り込んできた。先発の大野は「楽しみで、ワクワクしていて、気持ちが浮いていた分、ボールも高めに浮いてしまいました」と反省したが、落ち着きを取り戻した5回以降は無失点に抑えた。「もっと威力のあるローボール(低めの球)を放れるようになること」を夏へ向けての課題に挙げる。「甲子園は凄く投げやすかった。もう1度戻ってきたいです」と、完敗にもネガティブな感情はない。
チームのモットーはエンジョイング・ベースボール。試合終了後、地元・奄美大島の島民らが足を運んだ一塁側アルプス席はもちろん、相手の三塁側アルプス席へも一礼した。塗木監督は「(21世紀枠で出場した)2014年にも行ったことです。相手チームへ敬意を払ってこそのエンジョイング・ベースボール。自分たちだけが楽しんでもしかたがありません」と説明した。“聖地”にさわやかな風が通り抜けた。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)