日本ハム変える「選手の目立ちたがり化」 新庄監督の初勝利に見えた“イズム浸透”

やりたいことを口に出し結果に…新庄イズムが広がれば強くなる

 指揮官が現役時代に仕掛けた“新庄劇場”と呼ばれるパフォーマンスも、その「プレッシャー」をかける道具だった。2004年9月20日、プロ野球史上初のストライキが明け、外野陣が揃ってゴレンジャーのマスクを被ってシートノックを受けた日もそうだ。新庄監督は9回2死満塁、幻の満塁サヨナラ弾(走者追い越しにより記録は決勝単打)を放ちチームを勝利に導いた。2006年6月6日、札幌ドームで地上50メートルから宙づりになった日も、チームは勝利した。人と違うことを言ったり、やるからには、本業でも結果を残そうよというのが新庄イズム。その気配が今の選手から出てきたことを、本当にうれしそうに語る。

 この日の立野は序盤、ボールが先行する苦しい投球を続けながらも、何とか無失点でイニングを重ねていった。「(1面に載りたいと)言ったことで、必ずマウンドで力む」という指揮官の予言通り、球数がかさんだ。まさに必死の思いで結果を出していった。「上手くいかなかったら悔しいと思って、地味な練習をどんどん、またしだすだろうし」と新庄監督。成長過程にあるチームは、失敗もまた財産となる。

 開幕カードでは3試合でのべ17人の投手が登板、その後もスタメンは毎日目まぐるしく変わり、選手の可能性を見極める起用が続く。ただ、この采配がいつまでも続くわけではない。指揮官の言葉によれば、2か月という明確な期限がある。

「どんどん使って、見極めて、固めていく。2か月くらいたって、ちょっとずつ固まってきてくれたら最高かな。6、7、8、9月は、来年へ向けてめちゃくちゃ大事な4か月になってくる。この場所で終わるチームじゃないし、選手が一番分かってますよ」

 自己主張を始めたのは立野だけではない。選手は何気ない場面でも嬉しさ、悔しさを全面に出した。この日の試合でも、2本の適時打を放った松本が塁上で派手なガッツポーズを見せた。「松本君はあんなにガッツポーズするの?」と報道陣に問いかけた指揮官は、おとなしい選手だったと知るとこう続けた。「見ていて気持ちいい。感情を表に出すのはね」。淡々とした口調の裏に、確かな手ごたえがある。2か月後“ビッグボス化”を果たした選手が、定位置獲りへの挑戦権を得ているはずだ。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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