「いいものは触る必要がない」 ダルや田中将を指導、名伯楽が語る“高卒投手の育て方”

若いうちに「10年投げられるだけの体を作る準備をしなくてはならない」

 ダルビッシュや田中将は“別格”とでも言うかのように、1年目からローテーションで投げるだけの能力があった。

「やっぱり高卒選手は、入団して1年ないし2年は2軍で体作りさせる。投げられないのではなく、投げさせない。夏の地方大会や甲子園で連投してドラフト1位で入ってくるピッチャーが投げられないわけがない。確かに高校生だと、初めて経験するプロのキャンプで他の選手の出来に焦って故障するケースが過去にはあった。今は周りが抑えて体作りから始める」と佐藤氏。入団当初は決して無理させずに体作りを優先させ、満を持して1軍へという流れが一般化し、近年の2、3年目での台頭を促しているのだろう。

 では、佐藤氏が佐々木朗と出会っていたら、どのような指導をしていただろうか。

「最初からコーチをしていたとしたら、何もしない。いいものは触る必要がない。ダルビッシュや田中にも言ったけど、『今から10年やるために何をするか。10年投げられるだけの身体を作る準備をしなくてはならない。30歳を過ぎたら鍛えることは少なくなり、維持するためのトレーニングが多くなる。今のうちに10年投げられるだけの準備をしておくことが息の長いピッチャーとして活躍できることに繋がる』と話す。それをどう本人が捉えてやっていくかでしょう」

 その上で怪我防止には細心の注意を払うという。「故障が完全に防げるとは言い切れない。本人が持っている体質や運というものもある。こちらとしては故障しないためのトレーニングやフォームを身につけさせるしかない」と力を込めた。

(松永多佳倫/Takarin Matsunaga)

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