子どもの指導に重要な“言葉選び” 元西武2軍コーチが語る“アカデミー奮戦記”
鬼崎裕司さん「(子どもに)うまく伝わらないことも多い」
2011年途中にヤクルトから交換トレードで西武に移籍し、2017年に現役を引退した鬼崎裕司さん。引退後は2軍育成担当や2軍内野守備走塁コーチなどを歴任し、「ライオンズアカデミー」のコーチに今年就任。子どもたちを相手に「野球を教えるのは難しい」と試行錯誤の日々を送っている。
これまで接してきた選手たちは言えば伝わり、やろうと思えばできる大人だった。だが、小学校低学年の子どもたちは「やってごらん」と言っても、全く違う動きになってしまうことが多いという。選手に対しては凝り固まった考えをほぐすのが難しかったというが、何もない状態で教えなければいけない子どもたちへの指導も難しいと感じている。
「まだ自分の体を扱えない子どもたちに、どうアプローチしたらいいのか考えながらやっています。難しい言葉を使わずに、大雑把に『バーンと打って』と言ったほうがいいのかなと思ったのですが、『そうなっちゃうのか…』とうまく伝わらないことも多い。そういう時は『ここだけ意識してみたら?』と言い方を変えたりしています」
野球振興に携わる以上、子どもが楽しく野球ができるように意識して指導している。より的確な言葉を見つけ出すために、一人ひとりをしっかり見るようにしている。「なぜそういう動きになるのか、しっかり見ていないと分からない。分からないと『ここをこう意識してみたらどう?』と指導できません。それぞれの子どもに応じた指導ができればいいんですけど、なかなか難しいですね」。
毎日、悪戦苦闘中だと語る鬼崎さん。子どもたちには野球ではなくてもいいので、何か目標を持って生活してほしいと話す。「『例えば、テストで80点以上取りたい。そのためには勉強しなければいけない。その勉強が足し算なのか引き算なのか』と目標を持てば、自分がやらなければいけないことが見えてくる。逆に目標を持たないと、何となく毎日を過ごしてしまいます。目標を持てば違う人生が見えてくると思います」。
これまでは若手のサポートをしてきた鬼崎さん。今は子どもに野球の楽しさを伝えるだけでなく、野球を通じて人間的にも成長してほしいと願い、日々を過ごしている。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)