「重い球」「重いパンチ」は実際にある? 五十嵐亮太氏と元世界王者が徹底考察

内山「相手と向かい合えば『今日は勝てるな』って分かりますよ」

五十嵐:そうそう。今、野球界は全てが数値化されていて、ボールの回転量とか、投手がどの球種をどの辺りに投げる確率とか、データとして出てくるんですよ。ボクシングでもラウンド毎に選手の特徴を数値化して、データとして頭に入れて戦いますか?

内山:いや、それはないですね。試合相手が決まれば映像を見て、こういう攻撃が得意だとか、ああいうパターンもあるな、というのは頭に入れますし、それを参考にトレーナーと練習をしますけど、実際に試合で向かい合ったら全然違っていた、ということはよくありますね(笑)。

五十嵐:そう、結局そこなんですよ! 野球もデータ分析をしていても、対戦した時に生まれるバッターとの空間で「違うな」と感じることがある。大事なのは、違うことを察知する能力があるかどうかで。

内山:バッターの構えた姿だったり、打席で立つ位置によって、ピッチャーが受ける印象も変わりそうですね。

五十嵐:その通り。データ化という点では、ボクシングは昔も今も変わらない感じですか。

内山;基本は変わらず、データ化はしていませんね。向かい合って立ってみての感覚。逆に言えば、相手と向かい合えば「今日は勝てるな」って分かりますよ。ゴングが鳴って少し向かい合えば、パンチを出さなくても、間合いで分かります。

五十嵐:その感覚、分かる! バッターのちょっとした仕草や雰囲気で「怯んでるな」とか「強気だな」って分かります。ピッチャーとバッターが対峙する空間では、マウントの取り合い。どっちが「自分が上」という雰囲気を強く醸し出して、相手を怯ませることができるか。マウントを取れば、自分有利に運ぶ流れが掴めるので、そこは強く意識しますね。

内山:まさにボクシングもマウントの取り合いですね。向き合って間合いをはかる中で、どちらがその空間を制することができるか。そこが大事ですね。(第4回に続く)

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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