元楽天・鉄平さんがプロになれた理由 小中学時代に経験した2つの“大きな転機”

「自分を客観視できるかは成績に深くかかわってくる」

 選手として、コーチとして、たくさんの選手を見てきた中で、自分を客観視できるかどうかは、プロでの成績に深く関わってきます。これは少年野球でも高校野球でもカテゴリーを問わず共通しているかもしれませんが、自分に足りないところを理解して修正できないと技術は上がっていきません。能力が高くても伸びない人は、自分の考え方以外を受け入れられないように感じます。こだわりを持つのはすごく大事ですが、時に成長を止めるマイナス要因となります。指導者は基本的に好意でアドバイスしてくれます。第三者が「直してみたら」という部分は、少なくとも試してみた方がプラスに働くと思います。

 自分自身の現役時代を思い返すと、守備と走塁は、ほとんど指摘された通りに修正してきました。難しいのは打撃です。打撃は感覚の部分が大きいので、他の人の言葉が自分の中で消化できない時があります。それでも、一度はやってみて感覚的に合うものを取り入れる取捨選択が長くプレーするためには重要です。

 プロに入ってからコーチによく指摘されたのは、先ほどお話した一塁に速く到達するための「走り打ち」です。走り打ちが過ぎると言われました。打ってから走り出すまでがどんなに速くても、そもそも安打性の打球を飛ばせなければ本末転倒です。指摘に納得できる点はあったので、しっかりバットを振ったうえで速く走り出すように練習しました。もちろん、長距離打者のように後ろに反りかえるようなスイングには変えません。一塁に速く向かうという大前提は保って、しっかり振るスタイルに少し寄せたイメージです。

 今振り返れば、プロになれたのは野手に専念し、左打者に転向したことが大きかったと思っています。目標をかなえる時にはターニングポイントが来ます。ただ、きっかけは偶然には訪れません。楽に技術が身に付いてプロになる方法があれば、プロ野球選手を目指す子どもたちに教えたいですが、今のところ見つかっていません。目標に向かって努力して、野球と真剣に向き合っていれば、大きなきっかけが転がり込んでくるはずです。

○土谷鉄平(つちや・てっぺい) 1982年12月27日生まれ、大分県大分市出身。津久見高校から2000年ドラフト5位で中日に入団。2006年に楽天へ移籍し、2009年に打率.327で首位打者に輝いた。オリックスへの移籍を経て2015年限りで現役引退。引退後は楽天アカデミーコーチ、2軍外野守備・走塁コーチ、1軍打撃コーチを務めた。現在は球団を離れ、野球解説者として活躍の場を広げている。

(「パ・リーグ インサイト」編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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