鷹・藤井皓哉は広島時代とどこが変わった? “無双投球”の要因を指標で分析
制球力が向上、ボールゾーン低めの球が増えた
続いて、広島時代の2018年と2019年、そして今季の球種別被打率と結果球の割合を比較する。2018年は速球とフォークの割合に大きな差がなく、時折スライダーも交えていた。この年は直球の被打率が.214と比較的低い一方で、フォークとスライダーはどちらも被打率.375以上と課題を残した。
2019年は直球の割合が65%近くまで増加し、代わりにフォークが前年の半分近くまで減った。同年は変化球の被打率がさらに悪化しただけでなく、速球も被打率.412と打ち込まれた。今季、6月までの被打率は直球が.067、フォークが.097を記録。スライダーも.118と非常に低い。割合に目を向けると、今季は速球の割合が5割を少し超す程度、フォークが約30%、スライダーの割合が18.7%まで増えており、各球種の質が向上したことで、配球面でもよりバランスが取れつつあるようだ。
広島時代の3シーズン(2017-2019年)の合算と、今年6月までの投球コースを比較すると、どちらも右打者の外角から低めに行くボールが多い。一方で、右打者の外角真ん中に行く回数が最も多い点には変わりがないものの、今年はストライクゾーンにおける偏りが少なくなっている。
2019年まではストライクゾーンの真ん中低めに行く球が多かったが、今年はそのコースだけが極端に少なくなり、ボールゾーン低めの球が増加。フォークボールが落ちきらずにストライクゾーンに行くと危険なだけに、この変化も制球力向上の表れと言えるだろう。
広島時代の課題を糧に独立リーグで研鑽を積み、復帰したNPBの舞台で本領を発揮する藤井。ソフトバンクで育成出身選手の活躍がたびたび話題となるが、中でもひときわ異色の経歴を持つ藤井の活躍は、挫折を味わった経験を持つ人々に対しても大きな勇気を与えるものとなるはずだ。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)