VRゴーグルを着けての素振りで打撃強化 画期的トレーニング施設に“潜入”

国学院大人間開発学部准教授の神事(じんじ)努氏【写真:宮脇広久】
国学院大人間開発学部准教授の神事(じんじ)努氏【写真:宮脇広久】

投手のフォーム改善、新球種習得などにも役立つ

 ピッチングに対するアプローチも、非常に多角的だ。マウンドから投手がボールを投げると、専用カメラ14台を用いた世界最高級性能の「光学式モーションキャプチャシステム」が動作解析を行い、肩・肘・手首などのどの部分に、どれだけのストレスがかかっているかなどを測定。負担の少ない投球フォームを探ることにも役立つ。

 マウンドに仕込まれた「フォースプレート」は、重心移動の様子などを数値化。投手と捕手の間にトラッキングデータ機器「ラプソード」を設置すれば、ボールの球速、回転数、変化量などを計測できる。毎秒2000コマの「ハイスピードカメラ」で、ボールをリリースする瞬間を詳細な映像で見ることもできる。

 これだけの機器があれば、投手は高度な「ピッチデザイン」を行うことが可能だ。「ピッチデザインとは、今ある球種の改善、新しい球種をつくることを指します」と神事氏。「たとえば、ストレートでなかなか空振りを取れないと悩んでいる投手がいるとすれば、問題が回転数にあるのか、回転軸の方向なのか、投げるコースなのか、投げる割合なのかを、科学的に探ることができます。新しい球種を覚えたい投手は、まずは投げてみて、データや映像を参考にしながら最適な投げ方を発見していくことができます」と説明した。

 同施設では他にも様々な機器を揃え、プロ野球選手向けのみならず、アマチュア選手向けにも様々なプログラム、学割を含めた様々な価格設定を用意。神事氏は「選手はそれぞれ体格、骨格、筋肉、これまでに獲得した技術が違うのですから、科学的な測定に基づいて、テーラーメイド(注文仕立て)型のトレーニングを提供していきます」と強調する。

「実は僕自身、肘を壊して野球をやめた過去がある。僕みたいな人を減らしていきたいという思いもあります」とも明かした神事氏。球界全体に科学的で個別的なアプローチが浸透し、感覚的で画一的な指導が通用しなくなってきていることは間違いない。

【実際の映像】専用カメラ14台で投球フォームを分析 世界最高級性能の機器で動画解析する様子

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