川崎宗則が米球界で得たもう1つの価値観 監督から「休め!」、産休取得の裏側
野球選手である前に1人の人間… 新たな気付きを独立リーグで実践
メジャーとマイナーの違いを楽しんだように、日米球界の違いも楽しんだ。例えば、産休制度。ブルージェイズ時代の2013年に長男が誕生。メジャー昇格直後だったため産休取得を見送ろうとすると……。
「産休を取ってマイナーに落とされたら嫌だと思っていたら、ギボンズ監督に『いやいやカワ、それが仕事だから行け。休め!』と怒られました。野球は人生の一部に過ぎない。野球と家庭だったら家庭が大事というのが向こうの考え。最初は戸惑いましたけど、なるほどな、と勉強になりました」
マイナー球団での同僚の中には、シーズンオフになると学校の教員として働く“二刀流”がいた他、色々な資格を取ったりビジネスに携わったりしながら、マイナー選手を続ける人もいたという。
「先生をしていた選手がある日、『カワ、もう辞めるから。学校の先生に戻るわ』って言うから、僕も『あ、そう。お疲れ!』って。野球を辞めただけで人生の価値は変わらない。もしかしたら次のキャリアの方が楽しいかもしれないし。野球を楽しみに見に来てくれるお客さんを楽しませることも大事だけど、野球で成績を残すだけが全てじゃありません。野球選手である前に1人の人間。いいプレーと合わせて、人間性も上げていかなければいけないと学びました」
日本とは違う価値観に触れるうちに、日本にいる時は考えなかった野球選手として収入を得ることの意味、スポーツが持つ価値についても気付いた。
「子どもの頃から野球が好きで、野球選手になったらお金をいただけるようになった。なぜいただけるのか。そこにはファンの方々に感動を届けたり、スポンサーさんが求めるイメージに相応しいと考えてくださったり、色々な意味があるわけです。
さらに言えば、子どもたちが野球やスポーツをする意味は何なのか。それはスポーツが失敗を学べる場であり、失敗をしながら人間形成ができる場だから。子どもたちが自分で考えながら失敗と成功を体験することが楽しくもあり、悔しくもあり。その積み重ねがスポーツは大事なんだと思いますよ」
新たな気付きを持って、再び日本で野球と向き合う今は「非常に楽しいです」と満面の笑みを浮かべる。
「栃木で18歳や20歳の子と一緒に野球をしながら、みんなで野球をすることの意味を考えています。NPB選手になりたいというのも1つの夢で素晴らしい。でも、なれなくてもダメではない。今ここで、毎日をどれだけ楽しく過ごせたか、どうやって仲間と励まし合ったかが大事。それを気付かせてくれたのが北米でした」
目の覚めるような豪快アーチや胸のすくような三振ショー、息を呑むような華麗な守備の背景にある、日本とは別の価値観に思いを馳せると、また違った角度からメジャー観戦を楽しめるのかもしれない。
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(Full-Count編集部)