「決めたことを正解にしようじゃないか」 与田剛氏が“宝物”とする原監督の教え

監督として貫いた心掛け「指導者が迷ってはいけない」

 2009年は原監督とともに世界一の喜びを味わい、2013年の第3回大会では山本浩二監督の下で悔しさを知った。投手コーチとしてWBCという大舞台を2度経験し、「得る物がたくさんあった」と感謝する。この経験を生かすべく、2016年からは楽天で投手コーチとして梨田昌孝監督をサポート。2019年からは監督として中日を率いた。

 時として「指導者」と一括りにされることもあるが、監督とコーチとでは置かれた立場や職責は全く異なる。どちらも経験した与田氏は、その違いを独自の表現で説明する。

「何かを決定する時、コーチが選択肢に打つ○(丸)は小さくて、監督が打つ○は大きいイメージですね。コーチの選択は却下されることもありますが、監督の選択はグラウンドで誰も却下できない状態でなければいけない。それだけの覚悟が必要ですよね」

 中日で指揮を執りながら、何度も頭の中に浮かんだ「決めたことを正解にしようじゃないか」の言葉。「本当に何度ベンチで思い出したことか。ジャイアンツと戦っている時もそうですよ(笑)」と振り返る。

「選んだことを正解にする。代打を送るか。何のサインを出すか。やっぱり指導者が迷ってはいけない。仮に迷ったとしても、選手には気付かれないようにしないといけません。結果が全てではあるけれど、結果が出なくても、正解にしようとする過程が大事。指導者になって気付いたのは、役職としては上になって選手を率いているつもりでも、結局は選手に助けてもらうことばかり。だからこそ、道標はしっかり示すことができればと思っていましたが、反省ばかりです」

 監督として過ごした3年は「反省」の言葉なしには語れないが、「反省材料が色々あるということは、それを克服したいという意欲も湧いてくる」とも話す。「今すぐというわけではない」と断りを入れながら、またいつの日か心揺さぶる勝負のど真ん中に身を置くイメージは沸いている様子。反省材料をどう克服するのか、その姿を心待ちにしたい。

与田剛氏が振り返る2度のWBC 投手陣を支えた「最大限の力を引き出す」環境作り(侍ジャパン応援特設サイトへ)

(佐藤直子 / Naoko Sato)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY