日本ハムの“制球王”加藤貴之に退団・武田勝が贈る言葉「まだ認めないよ。あいつは」
「無援護」も好成績の原因?「僕らなりの攻めができるんです」
加藤にとっては、左のエースへの足がかりをつかんだシーズンだ。ベンチにも力を認められ、来季の開幕投手に指名された。武田コーチは「これが、本当の姿なんじゃないのかな。社会人のときにはできていて、それに今成さんも目をつけたわけでしょ」。この2人、もう一つ共通点がある。担当スカウトが同じなのだ。今年3月に急逝した今成泰章氏がその人。投手の平均球速が上がり続ける時代、それとは正反対の武器で戦う姿は、打者の手元でのキレを何より重視した今成氏のお眼鏡にかなったのだ。
SNS上では、時に加藤の「無援護」ぶりも話題になった。登板時、打線がなかなか得点を奪ってくれないのだ。9イニング当たりの援護点を示す「援護率」が2.44しかない。防御率が2.01だから、ギリギリでプラス収支だった。この点も武田コーチと一緒で、2011年の援護率が2.43でリーグ最低だった。
「援護がないから、あのピッチングができるんですよ。いきなり5点もらったらもう、守るしかなくなる。援護がなければ攻めるしかない。もちろん“僕らなり”の攻めです。1点、2点入ると緊張するんですよ。それで気が付いたら投げ切ってしまっていたとかね」
武田コーチは、今季限りで日本ハムを退団すると決まった。加藤には最後に、熱いエールを贈る。「唯一無二の存在を目指してほしいね。四球数も180イニング投げて、15個くらいを目指してほしい。3年、5年と続ければ、誰も追いつけない記録になるでしょ」。これからは、ちょっと遠いところから“後継者”を見守り続ける。
〇著者プロフィール
羽鳥慶太(はとり・けいた)神奈川で生まれ、愛知、埼玉などで熱心にプロ野球を見て育つ。立大卒業後、書籍編集者を経て2001年、道新スポーツに入社。プロ野球日本ハムを長年担当したのをはじめ、WBCなどの国際大会、アマチュア野球、平昌冬季五輪なども取材する。2021年よりFull-Count編集部所属。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)