長く現役続けるなら天才肌より“努力型”? モーグル上村愛子の持論に五十嵐亮太が共感
天才肌と努力型、野球で長いキャリアを積むのは…
五十嵐:僕は毎日コツコツやらないとどこか不安になるし、毎日「これはクリア、こっちもクリア、よしオッケー」と確認しながら段階を踏みたいタイプ。その方がステップアップしている実感があるし、野球には4年に1回という感覚がないので、コツコツやった方がいいんじゃないかと思っちゃいますけどね。里谷さんは五輪以外では勝たなくてもよかったのかな。
上村:う~ん、悔しい気持ちを感じたら次の試合はすごかったり、ここぞという大会は最後まで練習して結果を出したり、良くも悪くも波がある感じ。アプローチが全然違うので面白かったですね。
五十嵐:それぞれお互いの練習を見て「私、大丈夫かな?」って焦りそう。
上村:私は2年ほど多英さんの調整法を真似したことがあるんです。でも、体力が落ちるし、自信も失ってしまうし、私には合いませんでした。多英さんは手足が長くて筋肉もきれいについた体に恵まれたタイプで、体のベースがしっかりしているんです。長距離が得意だけど、苦手な動きがめちゃくちゃ多い。ただ、生まれ持ったベースがすごく強くて、私はそのベースを身につけるために毎日コツコツやる必要があるんです。
五十嵐:里谷さんは天才肌に多いパターンですね。そう考えるとアプローチも頷ける。サッカー界でも同じ話を聞きました。僕らと同い年の小野伸二は天才肌で、毎日キッチリ練習するわけではない。でも、坪井慶介は毎日コツコツ練習するタイプで違うらしいです。
上村:面白いですね。
五十嵐:野球で長く現役を続ける選手は、毎日コツコツ型が多いですね。
上村:コツコツやる人って怪我の対処も上手じゃないですか。自分の体の変化に気付きやすいというか。
五十嵐:確かにそれはありますね。大きな怪我になる前に気付けます。
上村:実は私、捻挫はあっても、靱帯を切ったり骨折という大怪我は一度もないんです。
五十嵐:モーグルで? 一度も?
上村:はい。長く現役でいられた理由の1つは、それかなと。毎日やっていると自分の体も把握できるし、調子が落ちてきても「今、焦っても仕方ない」と分かる。練習や気持ちが左右されてしまうのはもったいないですよね。
五十嵐:自分の体を知るって本当に大切なことですよね。
○上村愛子(うえむら・あいこ)
1979年12月9日、兵庫県生まれ。2歳の時に長野へ転居してから、雪やスキーと身近に育つ。中学2年生でアルペンスキーからモーグルに転向し、高校3年生だった1998年に長野五輪に出場し、7位入賞。2014年のソチまで五輪5大会連続入賞した。2007~08シーズンには日本人初のW杯年間総合優勝の快挙。2014年に引退後は競技の普及や環境活動などに取り組んでいる。11月9日にイラストを手掛けた絵本「ゆきゆきだいすき」(小学館)が出版された。
(佐藤直子 / Naoko Sato)