五十嵐亮太とモーグル上村愛子の“意外な”共通点 趣味高じた絵本に込める雪への思い
五十嵐亮太×モーグル上村愛子【第3回】「絵を描く」―同世代対談「極める」第3弾
日米23年のプロ野球生活を送った五十嵐亮太さんが、各界のトップで活躍する“同世代”と対談するシリーズ「極める」。同世代だからこそ共有できる想いを語ったり、異業種だからこそ新鮮に感じる発見に驚いたり、多岐にわたるトピックスについて語り合う。
第3弾のゲストは、フリースタイルスキー・モーグル元日本代表の上村愛子さんだ。1998年の長野五輪に18歳で初出場して以来、2014年ソチ五輪まで5大会連続入賞。さらには日本人初のワールドカップ(W杯)年間総合優勝の偉業を遂げるなど、2014年に現役を引退するまで長く活躍した。今なお健在の“愛子スマイル”を浮かべながら、五十嵐さんと競技や新たな挑戦について語る。全3回シリーズの第3回は「絵を描く」について。
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――実はお2人には、絵を描くことが趣味、という共通点があります。
五十嵐:僕は幼稚園の頃からお絵かきが好きで、小学校低学年の頃には絵を習っていたんですよ。しばらく描いていなかったけど、子どもが生まれてから子どもが喜びそうな絵を描いて遊ぶようになって。アメリカでは遠征先で時間があったので晩酌しながら描いたり、オフの暇つぶしに描いたりしていました。最近は描いていません。
上村:私は練習ノートやメモに、ササッとイラストを描くのが好きだったんですね。夫(アルペンスキー元日本代表・皆川賢太郎さん)も私も現役だった頃は、なかなか自宅にいるタイミングが合わなくて、書き置いた伝言にイラストを添えたりしていました。
五十嵐:上村さん、絵本のイラストも担当したとか。この本ですね。
上村:そうなんです。11月9日に発売された絵本「ゆきゆきだいすき」のイラストを担当しました。夫が代表理事を務める「冬季産業再生機構」の「SAVE THE SNOW」プロジェクトで、地球の温暖化と雪の関係について子どもにも大人にも知ってもらおうという絵本です。
五十嵐:温暖化で氷河が溶けている、というニュースをよく聞きます。
上村:このまま温暖化が続いたら、今のようには雪が降らなくなってしまうと言われています。雪を守ろうという活動の中でも、スキーやスノーボードを好きな人が中心になる活動は「結局自分が滑りたいからでしょ」と思われがちですが、そうではない。地球全体を考えた時、今雪が降っている場所に雪が降らなくなるということは地球のバランスが崩れているということなんです。
五十嵐:それはどういうことですか?
上村:日本は海に囲まれた島国で、中国大陸から吹く冷たい風が大きな山に当たって雪がたくさん降る仕組みになっています。でも、こういう場所は地球上にそう多くはありません。日本人は雪が降ることに慣れてしまっているけど、海外ではそうではなくて。
五十嵐:確かに、海外から雪を求めて日本にやってくる旅行者もいますね。
上村:その日本に雪が降らなくなったら、おそらく世界中で降らなくなるだろうと言われています。この先の未来も地球で雪が降るというバランスを保てないと、雪が降らなくなった頃には人が住めなくなるかもしれない。だからこそ、雪を大切に思ったり、好きになったり、愛でてもらいたい、というプロジェクトなんです。