DeNA今永はWBCに「言葉を聞きに行きたい」 年下にもヒント求める“投げる哲学者”
巨人・大勢から好投のヒント、若手の“弟子入り”も受け入れる
11月9日に札幌ドームで行われたオーストラリアとの強化試合第1戦では、侍ジャパンの先発を務め、4回を3安打10奪三振1失点(自責点0)という快投を演じた。この時、チームメートとなった6歳下の巨人のルーキー・大勢に教えを乞うたという。「キャッチボールの後に、どういう感覚で投げているのか、どういうふうに体を使っているのかを質問したところ、僕と似たような感覚があり、同じような悩みを抱えていました。大勢選手から、状態が悪い時の修正のしかたを聞き、実際にそれがオーストラリア戦で生きました。新しい引き出しをつくってもらいました」と感謝を口にする。「年下にも素晴らしい才能を持った選手はたくさんいますから」と、年齢の上下にこだわりはない。
具体的な修正ポイントを聞くと、今永は「僕は投球の際に肋骨が浮きやすく、そうなると肩甲骨を引き寄せにくくなり、なかなかいい球が行かない原因になっていた。大勢選手からは『そういう時には体幹をしっかり入れます』とヒントをもらいました」と詳細に説明してくれた。専門的過ぎて少々難解だが、2人のプロフェッショナルの間で有意義な会話が交わされたのは間違いないようだ。
一方で、他球団から今永に弟子入りを申し出る若手投手も、左腕を中心に絶えることがない。このオフに高知、熊本で行う自主トレには、新たに巨人の21歳左腕・井上温大投手が参加する。今永は「光栄というより、恐れ多い。僕はそれほど凄い成績を残したことがあるわけではないのに……」と謙遜しつつ、教えを乞うてくる選手には「僕が巨人の菅野(智之投手)さんに教わったように、僕にできることはやってあげたい」と惜しみなく伝授する姿勢を貫いている。
思考が深く、時に一般の人には難解なコメントも残すことから、付いた異名が“投げる哲学者”。「トップの中のトップは、言語化能力が優れていると思う。自分が言葉にできない感覚を、言葉にできる選手がいる。(侍ジャパンには)そういう言葉を聞きにいけたらいいなと思います」と目を輝かせる。WBCで超一流の選手たちと接し、世界と戦う中で、また1段階も2段階もレベルアップすることだろう。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)