打者を制圧する“MVP右腕”の進化 山本由伸が「2年連続4冠」を成し遂げた理由

オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】
オリックス・山本由伸【写真:荒川祐史】

フォークのストライク率が年々向上、今季は70.7%に達した

 オリックスは2022年シーズン、パ・リーグ連覇、26年ぶりの日本一に輝いた。絶対的エースとして君臨し、パ・リーグMVPに輝いたのが山本由伸投手だ。昨年に続いて最多勝、最高勝率、最多奪三振、最優秀防御率のタイトルを獲得した。投手4冠はNPBが2リーグ制となってから山本の他に8人が達成しているが、その翌年に1つでも主要タイトルを獲得したのは1人のみ。名だたる好投手をもってしても、ハイパフォーマンスを継続するのは至難の業ということだ。

 現在のパ・リーグのみならず、NPBの歴史全体で見ても指折りの存在といえる山本。主な武器はストレート、カーブ、フォークで、これらは毎年優秀な被打率を記録している。今季の被打率はそれぞれ.239、.143、.152だった。他にもカットボールやシュートなど多彩な球種を操ることができるが、ここ数年は徐々に主要な3球種の割合を増やしてきた。被打率の低い、信頼できるボールで投球を組み立てる。このシンプルな思考が、安定した成績を残し続けるようになった一因かもしれない。

 次に、ウイニングショットともいえるフォークに焦点を当てる。デビュー当初から三振を奪う決め球として威力を発揮してきたが、ここ数年は早いカウントでの使用が増えてきた。特に今季はストライク率が70.7%と、同60%前後で推移しているリーグ平均を大きく上回り、カウントを取るボールとして高い効果を発揮した。スピードボールもあるなかで、打者は最初からフォークもマークせざるを得ず、こうした組み立てが山本の攻略を難しくしている要素のひとつともいえるだろう。

 フォークの精度向上も影響してか、今季は3球目までに打者を追い込むケースが大きく増加した。その場合は相手を圧倒しており、とりわけ三振割合は47.8%とリーグ平均を10ポイント近く上回る。こうした優位なカウントをより高い確率でつくれるようになったことも、今季の山本が見せた進化といえそうだ。

 2年連続の投手4冠という前人未到の快挙を成し遂げた背景には、打者に対して早々に優位に立ち、制圧するというまさに王者の貫禄ともいえるピッチングがあった。日本シリーズでは初戦先発も負傷降板の悔しさも味わったが、その思いをバネにさらなる進化を見せるか。山本の2023年が今から楽しみだ。

(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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