台湾球界で需要高まる日本人指導者 元中日・井端氏や「ノックの名手」ら招聘

元中日・井端弘和氏【写真:荒川祐史】
元中日・井端弘和氏【写真:荒川祐史】

2024年に1軍参戦…「第6の球団」台鋼は拡張ドラフトで5人を指名

 台湾プロ野球(CPBL)では待望の第6の球団「台鋼(TSG)ホークス」が誕生した。CPBLでは、新規参入球団にはいくつかの優遇措置を与えているが、そのひとつが拡張ドラフトだ。

 拡張ドラフトは参入1年目のオフに、他チームの30人プロテクト枠外(同年と前年のドラフト指名選手も対象外)から1人ないし2人ずつ指名、参入2年目のオフは18人枠外から1人ずつ指名できるルールとなっている。台鋼は12月5日、5球団から11月末に提出された名簿をもとに、中信から内野手の杜家明、統一から捕手の張肇元、楽天から右のアンダースロー張喜凱らを指名。来季はまず2軍、2024年から1軍参戦となる中、若手のセンターライン候補を補強した。台鋼は1選手あたり台湾元300万元(日本円約1340万円)の権利金を支払う。

 また、台湾プロ野球は9日、各チーム上限60人の契約者名簿を発表、5チームで計59選手が名簿から漏れた。名簿発表後、事実上の戦力外選手と、再交渉の可能性を残す選手を分けて発表する球団もあったが、球団毎に発表方法が異なっており、把握しづらい形となっている。昨年は47人が名簿から漏れた中、25人が戦力外となり、うち13人が他球団へ移籍した。

 年間最下位に沈んだ富邦は、5球団最多となる17人が名簿から漏れたが、この中には投手の陳鴻文、王躍霖、内野手の林益全、外野手の高國輝ら、実績あるベテランも含まれていた。富邦はこれらの選手については再契約、配置転換の可能性を含め再交渉するとしているが、本人達は現役続行を希望しており、移籍となる可能性もありそうだ。早速、楽天は陳鴻文と接触したことを認めている。

 日本球界経験者では元ソフトバンク、台湾では野手として活躍してきた陽耀勲(富邦)が戦力外となったほか、独立リーグ経験者では元高知の林逸翔(富邦)、元福島、兵庫の蔡鉦宇(統一)が、日本留学経験者では謝修銓(統一)、周奕丞(富邦)らも名簿から漏れた。このうち、林逸翔は引退を発表。周奕丞は球団通訳就任が発表された。優先交渉権をもつ台鋼は、若い投手、捕手を中心に補強していきたい、としている。

台鋼は井端弘和客員コーチをこの秋に続き、春季キャンプでも招く予定

 今季は前期シーズンは楽天、後期は中信兄弟が制し、台湾シリーズもこの2チームによって争われた。その結果、楽天・古久保健二ヘッドコーチ、中信・平野恵一打撃・野手統括コーチら台湾人監督を支えた日本人指導者の存在もクローズアップされることとなった。秋季キャンプの期間も、1990年代後半から2000年代にかけ、台湾のナショナルチームや統一で投手コーチを経験した酒井光次郎氏が富邦の客員投手コーチを務めた。酒井氏の来季契約は現時点では明らかになっていないが、日本留学経験のある周奕丞が球団通訳に転任しており、日本人指導者が就任する可能性は高そうだ。

 今季リーグ最下位の守備率に終わった統一は12月初旬、「ノックの名手」と呼ばれる玉木朋孝氏の守備コーチ就任を明らかにした。台鋼は、中日でゴールデングラブ賞を5度受賞した井端弘和客員コーチを秋季キャンプに続き春季キャンプでも招く予定だという。かねてから「守備を重視し、ち密な野球を取り入れる」というチーム方針を打ち出す「日本通」の劉東洋氏がGMを務める台鋼の動きには注目だ。

 また、来季、日台のチーム同士の交流再開も予想される中、複数の日本メディア紙が、阪神が来春の沖縄キャンプ中に中信兄弟と練習試合を検討していると6日に報じた。中信兄弟は「現時点ではなお検討中」としているが、元阪神の林威助監督は球団の判断に委ねることになるとしつつ、「かねてから交流を希望していた。若い選手にとってプラスになる」と前向きな姿勢を示している。

 中信は、前身の兄弟エレファンツ時代から台湾を代表する人気球団で、熱狂的なファンを持つことで知られるが、アジアシリーズへの出場はなく、これまで単独での来日はない。林監督、平野コーチのほか、鄭凱文や呂彦青ら阪神出身選手も多数おり、実現を期待したいところだ。(情報は12月12日時点)

(「パ・リーグ インサイト」駒田英)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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