OB捕手が驚いた阪神・岡田彰布新監督の凄み セオリー無視で天敵攻略した“慧眼”

阪神・岡田彰布監督【写真:荒川祐史】
阪神・岡田彰布監督【写真:荒川祐史】

打線は固定?「スタメンをコロコロ変えることは好まない監督です」

 2023年のプロ野球界は、15年ぶりに阪神の指揮を執る岡田彰布監督に熱い視線が注がれそうだ。阪神はその岡田監督時代の2005年以来、18年ぶりとなる優勝にたどり着くことができるのか。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、知将の実像を明かす。野口氏は岡田監督が“第1次政権”で采配を振るった04年から08年までの全5年間、阪神でプレーした。

 岡田監督は固定観念にとらわれず、的確な指示を出せる指揮官だ。野口氏には阪神現役時代、強烈に印象に残った試合がある。当時、阪神は中日の技巧派左腕・山本昌投手を大の苦手にしていた。試合前のミーティングでは毎度「低めを捨てて、高めに浮いてきた球を逃さず打とう」とセオリー通りの指示が出たが、捉えられる兆しさえ見えなかった。

 ある試合の中盤、その日も山本昌投手に完璧に抑えられていたが、岡田監督がナインを集め円陣を組ませた。「あのさ、低めを捨てて高めを打てと言うけどさ、高めになんて来るんか? 全然けえへんやんか。だったら、少々ボールでもいから、低めを狙って打っていけよ」と命じたのだ。

 ナインは目から鱗が落ちたように、一気に山本昌投手をめった打ちにしたのだった。野口氏は「ベンチで隣に座っていたカネさん(金本知憲元監督=当時外野手)と、『言うことが凄いな』と話したことを覚えています」と語り、「選手はセオリー通りの指示を聞き慣れているので、逆のことを言われると一瞬『えっ?!』となるけれど、よく考えるとうなずける。凄い監督だと思います」と述懐する。

 2005年にジェフ・ウィリアムス投手、藤川球児投手、久保田智之投手の3人で“JFK”と呼ばれるリリーフトリオをつくり、優勝の原動力としたのも岡田監督だった。「特に久保田は元々、150球投げても球威が落ちない稀有な先発投手で、リリーフに回すなんて、なかなか思いつかなかった。最初はびっくりしましたが、久保田は2007年にNPB歴代最多の90試合に登板するなど、完全にハマりました」と振り返り、「適材適所の選び方が凄い」と感嘆する。

 一方で、「1~8番まで固定して戦うタイプ。試合終盤の代走や守備固めはもちろんありますが、スタメンをコロコロ変えることは好まない監督です」とも。選手としてはキャンプ、オープン戦でアピールし、開幕スタメン野手8人に名を連ねることが重要になるわけだ。「岡田監督就任直後の秋季キャンプの様子を見た限りでは、佐藤輝明もまだまだレギュラーを保証された立場ではありません」と野口氏は見る。岡田監督はV奪回のために、どんなラインナップをつくり上げるのだろうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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