「こんなにもつらいことなんだ…」 “外国人”となった福留孝介氏、米国での葛藤
初めて分かった外国人選手の気持ち「こんなにもつらいことなんだ」
それまで経験したことのない感覚を味わい、課題を解決するための試行錯誤を続けた。「新しいことを感じられたことも1つの経験」とワクワクするような気分になる。その一方で、解決策が見つからなければ「そこでは生きていけない」というシビアな世界でもある。
自分が何を感じ、何を考え、どういう方向へ進もうとしているのか。そういった状況をチーム首脳陣に伝え、共有しておくことは大切だ。そのコミュニケーションが円滑に図れるようにサポートするのが通訳の役目となる。ただ日本語から英語、英語から日本語に言葉を変換するだけではなく、時には文化や生活習慣などの違いも考慮しながら補足するなど、互いの理解を深めるアシストもする。とはいうものの、やはり人を介するコミュニケーションでは真意が伝わりきらないこともある。
「アメリカに行って、言いたいことが言えないってこんなにもつらいことなんだ、自分の言っていることの本当の意味が伝わるのってこんなに大変なんだって実感しましたね。日本でプレーする外国人選手の苦労がすごくよく分かるようになった(笑)」
例えば、2死満塁で二塁ゴロに倒れた場合、日本では言い訳せずに凡打という結果をわびるのが美徳とされるが、米国ではどうしてミスが起きたのかを説明する責任が求められる。こうした違いに自身も戸惑った経験があるだけに、日本球界復帰後、福留氏は外国人選手の様子には気を配ったようだ。
「外国人選手が困った様子の時は『どうした』って話を聞いて、通訳にも『この選手はこう思っているんだから、チームにはもう少し細かいニュアンスも伝えないと彼が誤解されかねないよ』という話をしたこともありますよ。正直、アメリカに行く前は『日本に来たら日本語を話せよ』って思ったこともあったけど、自分がアメリカで通訳を使うようになって、外国人選手の大変さが身にしみて分かった(笑)。その気持ちが分かるようになっただけでも、アメリカに行って良かったと思いますよ」
野球とベースボールの両方を経験したことで、福留氏は物事を見る新たな視点を手にし、人として幅を広げることになったようだ。
(佐藤直子 / Naoko Sato)