見据えた未来「1位は前田しかおらん」 29年前から不変、松田オーナーの情熱と広島への愛
変わらぬ長期展望…先につながるアクションを継続
「長期的展望」は担当記者時代にも何度も聞いたフレーズだ。先を見据えての選手育成、戦力バランスの調整、ベテランと若手の交換トレードもその策の一例といえただろう。他球団とは違うオリジナルな発想、考え方。すごいのは、そのほとんどを現実化していることだ。とりわけ、インタビューでも話していただいたが、マツダスタジアムはその象徴といっていいだろう。
令和の今もまた「長期的展望」は変わらない。今回、取材にうかがった日、スタジアムは新たに工事を行っていた。いつの時代も、目先のことだけではない。今の子どもたちが大人になって、その子どもたちを球場に連れて行く。そして、その子どもたちがまた大人になって……。2世代、3世代、4世代、ずっと先につながることを考えてのアクションが続いているが、これは1994年の頃もおっしゃっていたことだ。
あの頃は「カープ女子」なんて言われる時代がくるなんて想像できなかったが、私が担当記者時代の29年前から当時の松田オーナー代行は「女性ファンを大切にしなければいけない。女性ファンを増やさなければいけない」と何度も話をされていた。そして、これもまた今も変わらぬテーマのひとつで今度は「カープ女子と言われていた子たちの下の世代のことも考えなければいけない」となる。未来へ向けて、いたるところで、カープ球団はたえず動いているのだ。
今年はうさぎ年。松田オーナーは年男だ。実は私も年男というと「お前もうさぎか、72か」と笑顔とジョークで返された。懐かしい三村カープ時代の話をすれば「1994年ってワシはいくつや。計算してみいや」。こちらが、どんなにくだらない質問をしても、答えは何らかの形で返ってくる。これも昔と同じ。当たり前だがオーナーとの年の差は変わらない。「お前、太ったな」。そう言われた時だけ、嫌でも現実に引き戻されたが……。
昔と同じように「もうええか」で終了したインタビュー。さらなる新展開について、松田オーナーは「ワシは2月(11日)に72やぞ、もう勘弁せえや」と謙遜されたが、きっとまだまだいろんなことを考えておられるはず。厚かましいと存じておりますが、またお話をうかがいたいと思っている。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)