短期決戦の浮沈握る「データ分析」 4代監督に仕えた侍コーチが語る“使い方”
「一番大切なのは投手と捕手がいいものを引き出し合うこと」
村田コーチは「リーグによって投手のレベルが違いますから、特定のコースや球種をよく打っているというデータがあったとしても、どういうボールを打っているのかを考え合わさなければいけません」とデータ分析の複雑さの一端を明かす。「まず拾えるデータは全部集めてもらって、その中で相手打者の傾向をつかみ、日本の投手に当てはめていく。それでも、それが最終的な答えではありません。実際に試合が始まってから、そのボールに対してどのようなアプローチをしてくるかを随時つかみながら、次の打席、その次の打席に生かしていくことが大事です」と語る。
今は、「カーネクスト 2023 WORLD BASEBALL CLASSIC 東京プール」の1次ラウンドで対戦する韓国、オーストラリア、中国、チェコ共和国の分析を中心に、準々決勝で対戦する可能性のあるプールA(台湾、オランダ、キューバ、イタリア、パナマ)の展開にも目を配り、準決勝・決勝の相手になるかもしれない米国、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラのデータ収集・分析も並行して行なっているのだから、多忙を極めている。
しかし、ここまでデータに手間をかけてもなお、村田コーチは「でも……」と言葉をつなぐ。「一番大切なのは、投手と捕手がコミュニケーションを取って、いいものを引き出し合い、投手が自分のボールをしっかり投げることです。データはその先にあるもので、迷ったり行き詰まったりした時のために、頭に入れておくものです。頭でっかちになってほしいわけではありません」と強調する。現在、宮崎キャンプ中の侍ジャパンはブルペンなどで、普段別のチームでプレーしている一流投手陣と一流捕手陣が、まさに突貫工事で擦り合わせを行なっている最中だ。
「データは細かくなり過ぎても使えない。僕は端的に、困った時に使えることに焦点を当てて、選手にどう伝えたらいいかを考えています」と村田コーチ。人の目に触れないところで、チームの浮沈に関わる仕事を粛々と続けている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)