奪三振率は自己最高14.46…松井裕樹は何が変わった? “恩恵”受けたスライダー

楽天・松井裕樹【写真:荒川祐史】
楽天・松井裕樹【写真:荒川祐史】

通算200セーブまで残り3、史上最年少での達成は目前

 楽天の守護神として昨季、開幕からフル回転の働きを見せた松井裕樹投手。リーグトップの32セーブを挙げ、自身3年ぶり2度目となる最多セーブのタイトルを獲得した。通算5度のシーズン30セーブを達成した投手はほかに3人いるが、パ・リーグ球団のみに在籍では松井裕が初めてだった。

 先発でキャリアをスタートさせたが、当初から優れた奪三振能力を見せていた。2年目の2015年に抑えに抜てきされると才能が開花。セットアッパーに回った年や先発に再挑戦した年も含めて高い奪三振率を記録し続け、昨季はキャリアハイとなる14.46をマークした。これは昨季パ・リーグで30試合以上に救援登板した39投手の中で、ソフトバンクのモイネロに次ぐ2番目の高さだった。今回は、圧倒的な数字を残すことができた要因を探っていく。

 主な持ち球はストレート、カーブ、スライダー、フォークの4球種。昨季はどの球種も前年と比べて球速が2~3キロ向上しており、フォークの平均球速は140キロを超えていた。140キロ台のフォークを武器とする投手といえば、オリックス・山本やロッテ・佐々木朗などが挙げられるが、左腕でこれほど速いフォークを操る投手は珍しい。

 球速が上がったことによる恩恵を最も受けたのは、松井裕の代名詞ともいえるスライダーだ。2ストライクに追い込んだ状況での奪空振り率は27.5%と前年から大幅に向上し、フォークに並ぶ勝負球として機能していた。大きく曲がるスライダーは打者に見極められる可能性もあるが、昨季は球速アップによりボールを見られる時間が短くなったことで、多くの空振りを奪えるようになったと考えられる。

 もうひとつ注目したいのが、追い込む前のピッチングだ。2021、22年ともにストレート中心の組み立てだが、昨季は2021年よりもスライダーやフォークの割合が多くなっている。スピードアップした変化球をより多く交えることで、相手にとっては的を絞りにくくなりそうだ。実際、打者を2ストライクに追い込んだ打席の割合は66.5%と、2021年の62.8%から増加していた。このように三振を奪うチャンス自体を増やせたことも、自己最高の奪三振率を記録できた要因として挙げられるだろう。

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を戦う日本代表「侍ジャパン」に選出されている松井裕。2017年のWBC前回大会では3試合の救援登板で無安打無失点とチームに貢献しており、今大会でも持ち味を生かした投球に期待したい。また27歳でシーズン開幕を迎える今季は通算200セーブまで残り3としており、DeNA・山崎の記録(29歳10か月)を塗り替える史上最年少での達成も目前となっている。球史に残る名クローザーへと歩みを続ける左腕のピッチングに、今季も注目していきたい。

(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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