「日本のレベルに達するのは難しい」 豪州のメジャー右腕が気付いた“強さの秘密”
日本の選手は「あまりにも早くから野球の動きをできている」
豪州の選手は小さい頃から野球に触れるケースが少なく、野球の動きを後から身に着けていくのだという。「日本と違って、野球がメジャーではないですから。フットボールやクリケットがメーンで、子どもたちが小さなころからプレーするのはこちら。日本の子どもは小さなうちからキャッチボールをしたり、バットを振ったりできている。野球に関係した動きをできていると思います」。
さらに、日本と季節が逆となる豪州の選手にとっては、年末年始こそが野球のシーズン。北半球の夏にプレーする機会を得られるのは、北米や日本からオファーのあるひと握りの選手だけだ。メジャー経歴のあるサーポルドも例外ではなく、現在日本の夏にあたる期間は父が経営する道路舗装の会社で働いているという。「日本の選手は、ぼくらよりスポーツ選手らしい身体をしていて、それも強い要因の1つかな」。プロとして、1年を通じて野球中心の生活を送れるのも大きな違いだ。
強化には、まず野球というスポーツを知ってもらうことから始めなくてはならない。母が豪州代表を長年率いたジョン・ディーブル氏と友達で、幼いころから野球を続けてきたサーポルドはレアケースだという。現状を考えた時に「条件がいろいろ揃わないと、野球で日本のレベルに達するのは難しいかな」と口にするしかない状況だ。
今回のWBCで、豪州野球のレベルアップを世界に示すことはできた。史上初の8強進出を果たし、ブルワーズや中日でもプレーしたデービッド・ニルソン監督も「いい準備がこの結果を招いてくれた」と、事前合宿を受け入れてくれた府中市に感謝した。子どもたちとの思わぬ出会いが、メジャーも経験した右腕に日本野球の“強さの秘密”を気付かせた。豪州に戻って種をまき、さらなる代表強化につなげることはできるだろうか。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)