「僕は飛んで来るなと祈っていた」 西武指揮官が回顧…大記録達成寸前の“野手の願い”

マウンドに集まる西武ナイン【写真:荒川祐史】
マウンドに集まる西武ナイン【写真:荒川祐史】

4年ぶりの大宮開催…慣れないグラウンドも「みんなでよく守った」

■西武 2ー0 ロッテ(13日・県営大宮)

 投手が完全試合やノーヒットノーランに近づくと、味方の野手陣は異様な緊張感に襲われる。西武・今井達也投手が13日、県営大宮球場で行われたロッテ戦に先発し、8回1死まで無安打(2四球2死球)に抑えていた最中もそうだった。

 名手が肝を冷やした瞬間だった。自身初のノーヒットノーランに達成へ向けて快調に飛ばしていた今井は7回、先頭の藤岡裕大内野手を四球で歩かせるも、3番・中村奨吾内野手を三ゴロ併殺に仕留める。続く4番・山口航輝外野手も、二塁後方へのフライに打ち取った。平凡な飛球だったが、ゴールデングラブ賞2度の外崎修汰内野手がグラブに当て、まさかの落球。一瞬、球場内がどよめいた。幸い、スコアボードにエラーを示す「E」ランプが点灯。完全試合寸前であれば大変だったが、ノーヒットノーランに影響を与えることはなかった。

 守備の名手には考えられないプレーで、普段と違う緊張感に包まれていたことがうかがえた。もっとも、外崎は続く8回、先頭の佐藤都志也捕手が放った痛烈な打球を、難しいショートバウンドで捕球し二ゴロで収めた。弾いていれば「ヒット」と判定されていたと思われる打球だった。

「トノ(外崎)も難しい打球をしっかり捕ってくれた。グラウンドの状態が良くないのは、両チーム同じ条件ですが、みんなで良く守ったと思います」と評したのは、試合後の松井稼頭央監督。この日は4年ぶりの大宮開催で、本拠地ベルーナドームとは違って内野は土。グラウンド状態も決して良いとは言えなかった。ノーヒットノーラン達成には、ハンデがあったとも言える。本拠地球場以外でのノーヒットノーランはレアケースで、阪神・川尻哲郎投手が1998年5月26日、倉敷で行われた中日戦で達成したのが最後になる。

 松井監督は「僕自身が現役時代に参加したノーヒットノーランは、(渡辺久信)GMの時。ひたすら、飛んでくるなと祈りながら守っていました」と回想する。1996年6月11日、現GMの西武・渡辺久信投手が西武球場(現ベルーナドーム)で行われたオリックス戦で達成。松井監督は当時、ショートのレギュラーになったばかりの弱冠20歳だったのだ。

 今井は結局、8回1死から安田尚憲内野手に三遊間を割る左前打を浴び、記録達成ならず。「しっかり強い当たりで打たれたので、逆に切り替えやすかった」と語り、9回2安打完封勝利にこぎつけた。クリーンヒットの形で記録が途絶えたことに、野手陣は胸をなでおろしていたかもしれない。

【実際の動画】野手陣を襲った異様な緊張感…名手外崎がまさかの落球をした場面

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