72年ぶりに記録塗り替えた“制球王” 日本ハム・加藤貴之が四球を出さないワケ
「3ボールから投げたボールがストライクになる割合」が驚異的
先に挙げたストレートとカットボールのほか、フォーク、シュート、スライダー、カーブ、チェンジアップと多彩な球種を操り、狙いの絞りにくさと各球種の精度の高さもあいまって、初球のストライク率の高さは際立っていた。
初球からストライクを奪えれば当然、与四球の減少につながる。またストライク先行のピッチングスタイルは多くのイニングを投げられる作用もあり、昨年の4月19日の楽天戦では9回をわずか90球で完封。年間でもリーグ2位タイとなる3完投をマークした。
ここまで、加藤のすぐれた制球力をさまざまなデータで確認してきたが、最後にその特徴が顕著に表れる状況を示したい。それは3ボールのときである。この状況でストライクゾーンへ投球される割合は、リーグ平均が例年58%前後のところ昨季の加藤は77.1%を記録した。与四球による出塁を避けることを最優先していたような様子が見てとれる。
3ボールの状況は相手打者がストライクゾーンに狙いを絞ってスイングしてくる場面でもあるが、チームの指揮を執る新庄剛志監督は、「四球を出すくらいなら場外ホームランを打たれたほうがまし」と就任当初に投手陣へ語っていた。加藤投手もこの言葉に背中を押され、積極果敢にストライクゾーンで勝負するようになったと今季の開幕前に明かしている。
いつでも、どの球種でもストライクを奪える投球技術に加え、打者優位の場面でも気後れすることなくストライクゾーンへと投げ込んでいく胆力。この2つが合わさって、シーズン最少与四球の記録が更新されることになった。
今季もここまで3試合に先発し、与えた四球はわずか1個。小気味よいテンポで球審のストライクコールを呼び込むピッチングを見せている。頼れる左のエースとして、チームをけん引するピッチングに期待したい。(数字はすべて2023年4月17日終了時点)
(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)