驚きドラフト指名の日系人に眠る「糸井嘉男級のポテンシャル」 山口アタルが挑む「限界」
謎だらけの育成選手はカナダ出身…日本野球は「意外と違わない」
昨秋のドラフト会議を見ていた時の驚きが忘れられない。日本ハムが育成3位で指名したのが山口アタル外野手だった。所属は米国のテキサス大タイラー校。とにかく全く情報がなく、分かったのはカナダ出身で、NPB複数球団の入団テストを受けていたということだけ。シーズンが始まり、そんな山口にようやく会えた。
ここまで2軍イースタン・リーグで22試合に出場して打率.238、1本塁打。本拠地・鎌ケ谷スタジアムの試合では、居残り練習の常連だ。大学では投手だったため、覚えることがとにかく多いのだという。それでも「毎日新しいことを習えるのは楽しい」と底抜けの明るさで笑う。
ある日は、一塁から外野に飛んだ打球をどう目で追いながら走るかという練習が続いた。「ずっと投手だったから、練習してなくて……。ベースランニングのことはしばらく考えたことがなかった。いつ力を入れて、どう加速するかとか、外野手が捕ったとか、落とした時のことをいろいろ考えながら走る方法を教えてもらっています。“シナリオ”がたくさんあるから、それをちゃんと理解してプレーできるように」。
野手として覚えることのほかにも、日米の“違い”を乗り越えている最中だ。日本の野球に飛び込んでみると「細かい。本当に細かい」という感想が口をつく。「アメリカではベースランニングが下手な選手も多いし、曲がり方なんて気にしていない選手が多い。あとサインが多くて、覚えるのが大変」と言う一方で「考え方の違いはあるけど、意外と違わない」とも。
なぜそう感じるのかといえば「日本の野球=甲子園」という常識で育ったのだという。「朝から晩まで練習して、みんな同じ髪型というのが僕の日本野球のイメージ。甲子園を1人で投げ切って600球とか……。プロはそうじゃないと、分かってはいたけど」。そんなイメージを抱いた理由を追求していくと、カナダではメジャーではない野球を始めたきっかけにたどり着く。