首脳陣の勧めを拒否した右腕「もういいです」 断ったタイトルへの道…「行きません」
首脳陣が先発を提案も断り…投手コーチに「行きません」
その年の球宴でセ・リーグを指揮したのは前年優勝の広島・阿南準郎監督。川端氏は監督推薦で選ばれると思っていたが、名前はなかった。「安仁屋さんに呼ばれて『辛抱せい、後半、まだまだ投げてもらわないといけないから休め』と言われた」。これがショックだった。
「僕はやっぱりチームのためにしかできないんだなぁって思った。剛速球投手でもないし、中途半端なんやなぁ、器用貧乏のピッチャーなんだなぁってね。華やかさが自分にないのはわかっていたから、ある程度、野球をやっていればいいかなと思うようになった」。三村氏の言葉で上がったはずのモチベーションが再び下がった。
その年、防御率のタイトル獲得のチャンスがあった。シーズン終盤になって先発に回ってイニング数を投げてタイトルを狙おうと言われた。だが、もはやそんな気分にもならなかった。「最後の方で、先発でいくぞって言われても、何か寂しさがあったんですよ。だから、先発しませんって断った。安仁屋さんに言われても、行きませんってね。三村さんには『安仁屋さんに聞いたぞ、何、意地張っているんだ。超二流のいぶし銀だってタイトルを狙ってもいいじゃないか』って言われたんですけどね」。
時が経って「今では、あの時のことを後悔しています」と川端氏は苦笑する。「あの時、例え先発に回っても、タイトルは取れなかったかもしれないけど、ひっくり返す可能性はあったわけだからね。ホント、今は思いますよ。なんで投げなかったかなぁってね」。だが、当時はどうしようもない感情だった。その気持ちを覆すことはどうしてもできなかった。
※6月6日午後4時30分、原稿の一部を修正しました。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)