吉田正尚は「今までにない日本人打者になる」 井口氏が分析する“イチロー級”の能力
なぜメジャー屈指の高打率をキープできるのか…
メジャーが開幕して2か月。エンゼルスの“二刀流”大谷翔平投手が規格外の活躍で沸かせる一方、リーグ2位という高打率で存在感を高めているのがレッドソックスの吉田正尚外野手だ。開幕当初こそ打率が1割台に低迷することがあったが、4月後半から調子を上げて今では打率.319をマーク。好打者ひしめくメジャーでの活躍に「1年目でここまでアジャストできるのはさすが」と舌を巻くのが、野球評論家の井口資仁氏だ。昨年まで対戦相手だった日本屈指の好打者について分析してもらった。
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吉田正尚が打席で持ち味を発揮しています。6日(日本時間7日)現在で打率.319。ア・リーグ2位とは大したものです。伝統あるレッドソックスでクリーンアップを任されている。言葉にするのは容易くても、なかなか簡単に成し遂げられることではありません。大型契約を結んだことも含め、1年目のプレッシャーがある中で結果を出すからファンが盛り上がってくれる。逆の状況であれば、ボストンはかなりつらい思いをしなければいけない場所でもあります。
なぜメジャーで高い打率をキープできるのか。それは高いコンタクト能力と鋭い選球眼を持っているからです。正尚というと豪快なスイングが印象的ですが、しっかりとバットを振ってくるのは追い込まれるまでの甘い球だけ。だからといって、際どい球を空振りするような大きなスイングはしません。5月上旬には115球連続で空振りをしなかったことで話題になりましたが、これは彼の持ち味が十分に発揮されている好例です。
選球眼がいいので、相手投手に多く投げさせることができる。メジャーのストライクゾーンは日本よりも広めで、正尚がしっかり見逃しているのにストライクを取られる場面もありますが、それにも動じずボールを追いかけ回してはいません。打ちたい気持ちが勝ると、どうしても自分のストライクゾーンを広げて、今まで手を出していたなかったボールまで手を出すようになってしまう。そこに惑わされないのが、彼のすごさ。自分が打つと決めたゾーンで勝負して、確実にヒットを1本打ってくる。だからこそ、好不調の波が少ないのでしょう。
先日、本人と話をする機会がありましたが、開幕当初はやはりカットやシンカーなど動く球に手こずらされていたようです。ボールを打つポイントを少し前に置くイメージを持ったことで、うまくさばけるようになってきたと言っていました。日本よりも球速が4、5キロ速い真っ直ぐに打ち負けまいと、4月はバンバン振っていましたが、元々は中距離打者でセンターから左中間方向に打球が飛ぶと調子がいい証拠。5月終盤には少し疲れもあったのか、打球を引っ張りにかかる時がありましたが、ここへ来て反対方向への打球が増えているので好調は続きそうです。