育成出身の新星に託した「究極の場面」 重圧の中の“強運”に指揮官「本当に見事」
2点ビハインドの7回無死一、二塁で古市が“ピンチバンター”
■ヤクルト 3ー2 西武(11日・ベルーナドーム)
西武は11日、本拠地ベルーナドームで行われたヤクルト戦に2-3で惜敗し、今カードを1勝2敗で負け越した。敗戦の中でも、松井稼頭央監督が絶賛したのが、この日1軍再昇格を果たしたばかりの古市尊(ふるいち・たける)捕手だった。
西武は1-3と2点リードされて迎えた7回、ヤクルト2番手の星知弥投手をとらえ、無死一、二塁のチャンスをつかんだ。松井監督は、長距離砲の渡部健人内野手の代打として古市をコールする。20歳は事実上の“ピンチバンター”。実際、古市は首脳陣から「バント行ってこい」と声を掛けられて右打席に入った。渡部は今季1、2軍を通じて犠打を決めていないが、古市はイースタン・リーグで打率.289(83打数24安打)をマークしつつ、2犠打も決めていた。
ミッションは、犠打を決め、一打同点の場面をつくること。相手の守備陣もバントと決めてかかってチャージしてくるこの場面での“ピンチバンター”は、普段の代打よりずっと大きな重圧がかかる。松井監督も「ある意味で究極の場面です」とうなずく。
絶妙なバントだった。初球、ワンバウンドのフォークを落ち着いて見送った古市は、2球目に真ん中高めの149キロの直球をバントした。やや強めのゴロが、二塁ベースカバーへ走った後の遊撃手の定位置へ転がった。投手の星は追いつけず、三塁手の村上宗隆は三塁のベースカバーへ走っていたため、古市に内野安打が記録され、チャンスは無死満塁に膨らんだ。
「本当はもっと三塁線ギリギリを狙ったのですが……」と言う古市だが、予想外の結果にニンマリ。松井監督は「(この試合で)1番良かったと思います。本当に見事だった」と称賛した。続く代打・平沼翔太内野手の左犠飛で、得点にもつながった。さらに古市はそのまま8回の守備からマスクをかぶり、佐藤隼輔投手、森脇亮介投手をリードして、相手に追加点を許さなかった。