日本の野球、ラグビーはなぜ強くなった? メジャーリーガー&代表主将が感じる“変化”

日米23年のプロ野球生活を送った五十嵐亮太氏【写真:徳原隆元】
日米23年のプロ野球生活を送った五十嵐亮太氏【写真:徳原隆元】

言われたことをやるだけではなく、自分で考えられる人に

五十嵐:やっぱり分かりやすい。ついていくには理想のキャプテン。ただ、結果にはしっかりこだわるから、ある意味厳しくもある。キャプテンが細かく指示するんじゃなくて、勝つためにどうするかを個人個人でしっかり考えようというスタイルですね。今は小中学生を対象にアカデミーを主宰していると聞いたけど、子どもたちには優しいんですか?

菊谷:優しいですよ。子どもたちとワチャワチャしながら、でも勝負は真剣に、大人げなく。ミニゲームをする時は僕も入って、子どもたちに「え〜」って言われながら、めっちゃトライ獲ってます(笑)。基本はみんなに考えさせるスタイルで、子どもたちにも課題解決のためにチームトークをさせたりしてますね。

五十嵐:誰が相手でも変わらないんだ。

菊谷:ラグビーって試合中は監督やコーチがグラウンド上にいないので、プレーする選手が最終的な判断をしなければいけないんです。だから、言われたことをやるだけではなく、自分で考えられる人になってほしいなと。

五十嵐:そうか、チームの作戦や監督の方針があっても、グラウンド上で違った風に感じたら、実際にプレーする選手たちが臨機応変に判断してプレーするんですね。

菊谷:はい、最終的な肌感覚みたいなものがあるので。海外チームと対戦する時は、当初の作戦とかなり変わることもあります。

五十嵐:野球はWBCで優勝して、ラグビーは2019年のW杯でベスト8入り。どちらもどんどん進化して強くなっていますよね。何が変わったと感じていますか?

菊谷:より理論的になったと思います。指導者はなぜこの練習をするのか、なぜこのプレーを選択するのかという説明を求められるので、チームの戦術面での理解度や実行力が高くなってきました。「とりあえず行っとけ!」みたいなのはなくなりましたね。体を鍛える、強くするという部分でも、今は選手がGPS器機を装着しているので、試合中の加速、減速、グラウンドに倒れている時間、走った距離など全てが数値化されている。世界中から集めたデータもあるので、自分が世界のどのレベルにあるのかも分かります。

五十嵐:野球も数値化されています。例えば、昔は感覚で教えていた変化球の投げ方を、今は手首の角度やボールの回転数など数値化して教えている。トレーニング内容もデータが生かされています。そのあたりの情報量が、10年前とは明らかに違いますよね。上手く活用しているからパフォーマンスも上がるし、試合展開も上手くいくようになる。

菊谷:例えば、今までは1/10の確率で正解を探していたのが、数値化が進んで選択肢が絞られて1/3くらいの高確率で選べるようになってきた。トレーニングも明確な意図を持ってできるし、必要な人材やスキルが見えてくるから、ある意味、面白いと言えば面白いですよね。

五十嵐亮太氏が41歳まで現役を続けた理由とは

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