ケンカ上等の内角攻め…「怖がらせる方が得だもん」 強面右腕に敵軍「あいつはやばい」

装った“悪役”「あいつが出てきたらやばいと思われるように」

 星野監督が掲げたケンカ野球に通じるものでもあった。「ユニホームは戦闘服」「グラウンドは戦場」。キャッチフレーズは「ハードプレーハード」。厳しい内角攻めはそれこそ当たり前の世界でもあったが、これは決して簡単ではない。「できないやつはいっぱいいたよね。(内角を厳しく)行けと言われて(コントロールミスで甘く入って)ホームランを打たれた投手が何人もいたからね」。

 もちろん、やみくもに投げていたわけでもない。鹿島氏は試合前の相手のバッティング練習を観察することもルーティンにしていた。「スコアラーからのデータが上がってくるから、この選手はなんで調子がいいんだろう、どういうタイミングを取っているんだろうっていう感じで見ていた。それでこいつは足元を動かした方がいいか、目線をずらした方がいいかを判断して、ゲームで実行していた」。試合前から何度も何度も頭の中でシミュレーションした上で本番に臨んでいたわけだ。

 そして、もうひとつ敢えて行っていたのが“悪役”を装うことだ。「帽子を目深に被って、目線が見えないようにしたし、絶対、相手チームの選手とはしゃべらなかった。あいつは変わっている、あいつが出てきたらやばいって思われるように演技した。イメージ作り。ウチの外国人選手にも、他球団の外国人選手に、あいつは変な奴と言ってくれと頼んでいた」。オフの選手会総会でも、わざと他球団の選手とは言葉を交わさず、黙っていたそうだ。

「怖がらせる方が得だもん。何を思って打席に立つのか、何を思って投げるのか、精神状態で余裕がある方が絶対勝つんだから。相手の体調のことも相手チーム担当の新聞記者に聞いた。もし痛めているんだったら、普通に投げればいいわけだしね。情報収集も無茶苦茶した」。1996年で現役を引退した鹿島氏の通算与死球は26。数字だけ見れば決して多くないが、他球団からは「ヒットマン」とまで呼ばれたのだから、それも狙い通りだったのかもしれない。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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