“穴”をふさいで16年目の大復活 鷹の巧打者を9年ぶりタイトルに導く「大転換」

卓越した選球眼が最大の持ち味

 次に、中村晃の年度別の打撃指標を見ていきたい。通算出塁率.369、出塁能力を見るIsoDも通算で.085という数字が示す通り、卓越した選球眼の持ち主だ。また、打席での選球眼や忍耐力を示す「BB/K」という指標は、1.00を上回れば非常に優秀とされる。だが、中村晃の場合は通算のBB/Kが1.085と、驚くべき安定感を誇る。打席でのボールの見極めに関しては、まさに球界トップクラスと形容できる存在だ。

 また、レギュラーに定着した2013年以降の10年間のうち.900以上のBB/Kを記録した回数は実に8度。さらにBB/Kが1.00を上回ったシーズンも5度存在し、2016年のBB/Kは1.868という抜群の水準に達している。今季のBB/Kも.929と相変わらず高水準であり、ベテランの域に達してからも優れた選球眼を維持し続けていることがうかがえる。

 その一方で、通算長打率は.369、通算ISOは.089と、長打力に関する指標は決して高いとは言えない。また、キャリアを通じて高い出塁率を記録しながら、OPSが.800を超えたのは2018年のみ。一発長打を狙うよりも、着実に出塁を狙うスタイルで活躍を続けてきたことが、これらの数字からも読み取れる。

 しかし、自己最多の14本塁打を放った2018年以降は、2022年まで5年続けてキャリア平均を上回るISOを記録。確実性はやや低下していたが、安打内における長打の割合は、むしろ増加していたことがわかる。

 今季はISOが通算の数字を大きく下回る一方で、安打数や打率は全盛期に近い水準に戻りつつある。再びトップバッターを任されることが多くなったこともあってか、打撃スタイルの面でもチャンスメーカーの役割に回帰しつつあるようだ。

 さらに今季はIsoDこそ低下しているものの、BB/Kは以前と変わらない水準にあり、出塁率に関しては直近5年間で最も高くなっている点も見逃せない。より積極的なバッティングスタイルに転換しながら、打席での忍耐力と優れた選球眼を維持できているところに、中村晃選手が復活を果たした理由の一端がうかがえよう。

過去2年間はインコース真ん中の球を非常に苦手としていたが…

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